短歌の企画者に話を聞いてみた~「まいつき短歌祭」武田ひかさん編~

企画

こんにちは。牛隆佑(うしりゅうすけ)です。短歌をつくったり短歌の活動をしたりしています。

「短歌の企画者に話を聞いてみた」の第6回は、2021年を盛り上げた「まいつき短歌祭」についてです。運営の武田ひかさんにすでに注目している方も多いでしょうが、短歌の企画者としても視野の広さ、考えの柔らかさには見るべきものがあります。今後もぜひ注目されてほしい存在です。

 

「まいつき短歌祭」企画者 武田ひかさんインタビュー

「まいつき短歌祭」とは?

牛:まず「まいつき短歌祭」の概要をお願いします。

武田:短歌のコンテスト(投稿)が主体になったイベント、でしょうか。選者に歌人や歌人じゃない方をお呼びして、色々な目線で楽しめたら、と思っていました。

2021年3月から開始して、8月(発表は9月)まで毎月開催で全6回行いました。ゲスト選者は順番に、大森静佳さん、toron*さん、サトウカエデさん、江戸雪さん、三宅香帆さん、千種創一さん、にお願いしました。毎回、ゲストと私とで、投稿された「自由詠」「テーマ詠」の短歌から、特選・入選・佳作を選びます

選考に先立って、投稿された全作品を匿名で公開したり、ちょっと有料にして副賞を充実させたり、スピンオフで他の企画をしたりしています。

結果発表はnote(有料)で行いました。他にもこれから合同歌集を発行する予定で、今はこつこつ作っている最中なんですが、なかなか大変ですね……。

達成できたかどうかは分かりませんが、あらゆる歌歴の方に楽しんでもらえたら、と思ってこのようなイベントになりました。

牛:投稿数はどれくらいでしたか。

武田:平均すると各回「自由詠」「テーマ詠」それぞれに200首弱といったところです。

牛:すごい数ですね。

武田:そうですね。ありがたいことです。

 

牛:武田さんご自身はいつ頃から短歌をはじめたんでしょうか。

武田:記憶している限りでは2019年末からです。元々、本を読むのが好きで、それまで読んだことのないタイプの本を読んでみようと思って、手に取ったのが『短歌タイムカプセル』(書肆侃侃房)でした。この本で短歌の面白さに目覚めて、今に至ります。

 

牛:岡山大学短歌会にも所属されています。こちらへの入会はいつ頃ですか。

武田:2021年度からで、入会からまだ1年経っていないくらいです。それまでは一人で短歌を詠んでいました。

牛:ということは、短歌を作り出して1年ほどの時期に、「まいつき短歌祭」をはじめたんですね。行動力に驚かされます。

 

「まいつき短歌祭」をはじめたきっかけ

牛:「まいつき短歌祭」をはじめたきっかけについて教えてください。

武田:岡山でされていた大森静佳さんのワークショップに通っている時に「#まいにち短歌」のハッシュタグを付けて、毎日、好きな短歌とその評をツイートしていたんです。1年が経って、そろそろ新しい何かをしたいなと考えて、「まいにち」の次なら「まいつき」かなあという安直な思いつきが最初のきっかけでした。

当時、「うたらば」(短歌と写真のフリーペーパー。発行人は田中ましろ。2010年~)など昔からのものに加えて、「青春短歌甲子園」(青春がテーマの短歌賞。主催は君野シリウス。2020年)「覆面短歌」(匿名の短歌応募企画。中の人はあの井。2020年~)など新しい企画が周囲で生まれていました。それらを見ていて、短歌の企画をしたら色んな人が楽しんでくれるんじゃないかとも思いました。

あと、以前からnoteに文章を書いていました。僕が発信することで、それまで短歌に触れてこなかった知人や友人たちの短歌に触れるきっかけになるんじゃないか、という淡い期待もありました。

一つ一つの細部を見ると「まいつき短歌祭」は新しくはないですが、色んなものを組み合わせて、参加者の方々が楽しんでくださるものを作れたらなあ、と思っていました。

牛:まさしく。大きいシステムや、細かな部分は、特に斬新とは思いません。でも、組み合わせの妙によって、細部的にも全体的にも参加者へのホスピタリティがとても行き届いた企画になっていると分かります。思いつきではじめたとは思えない絶妙な企画設計です。

何かしらの活動を考えた時に、個人誌や同人誌などの選択肢もあったと思うのですが、不特定多数を巻き込む短歌のコンテストになったのはなぜでしょうか。

武田:あまり憶えていませんが、自分が参加者になった時に、楽しめるのは「ガチガチじゃないくらいの競う場」だなと思っていたので、自然とそちらに向かったんだと思います。

それに、たとえば短歌に触れていない友人に短歌の面白さを知ってもらうには、同人誌だと訴求力が弱いだろうなという感覚も、一年前の自分にはありました。

牛:「短歌に触れていない友人に向けて」が活動の根っこになっているのは、TANKANESSのなべとびすこ編集長と共通する部分がありそうです。以前、なべとびすこさんから「自分の友人が短歌の良さを分かるんだから、みんな短歌を好きになるはずだ」という思いが根底にあると聞いたことがあります。

武田:それは僕もありますね。その人に合う歌に出会った時には短歌を好きになってくれるだろうと思っています。

牛:その広い感覚を持つ人は、意外に多くないのではと思います。

 

「まいつき短歌祭」の選者について

牛:ゲスト選者の顔触れがユニークです。どのような経緯で決まったのでしょうか。

武田:第1回の大森静佳さんは、僕が大森さんのワークショップに通っていて、お願いしました。第2回は、より若手の歌人にお願いしたくて、toron*さんに。第3回のサトウカエデさんは元々知り合いで、エッセイや小説を書く方だったので。第4回は、大森さんやtoron*さんよりも上の年代の歌人をと考えて、大森さんに相談すると江戸雪さんを紹介してくれました。
第5回の三宅香帆さんは、元々僕が三宅さんの本の読者で、大学時代に萬葉集を研究したり、短歌のことをエッセイに書いていたりしたので、面識はなかったのですが依頼書を送りました。
第6回の千種創一さんは、clubhouseで廣野翔一さんとお話しする機会があり、第6回のゲスト選者は誰がよいかという相談をしたところ、千種さんを薦められたんです。千種さんは僕も好きな歌人ですし、あまり選の場で見ない方だったので、どんな選をするのだろうと思って、お願いしました。

ゲスト選者にバラつきがあるようにとは考えました。

牛:バラつきとは。

武田:たとえば、最初から最後までTwitterで主に活動している知り合いに頼む可能性もありましたが、Twitter外への訴求力が弱まるでしょうし、選の傾向も固まってしまうかもしれない。すべて歌人にお願いしても良かったんでしょうけど、それもコンセプトと違ってきます。やはり、様々なバックグラウンドで創作をしている方にお願いしようと考えました。

もちろん、いっそ創作をしていない人にお願いすることもできますが、そうすると選歌に楽しんで取り組んでもらえるだろうかという不安もあったので。

牛:大事ですよね。祭り的な企画のインパクトを考えるなら、もっと奇抜な人選も考えられますし、仕事として依頼すれば引き受けてくれる人はたくさんいるでしょうけど、その人自身が楽しんで取り組んでくれるだろうかは分からない。

武田:そうです。その懸念がありました。

牛:入念に考えられたバランスの良い人選だと思います。

武田さんも選歌・選評をしていますが、運営しながら選者も兼ねるのは大変じゃなかったですか。投稿される短歌の数も多いですし。

武田:楽しかったけど、大変でした。特に時間的な面で。毎月の開催なので、選歌期間が10日間ほどしか取れないんです。

牛:選者だから、読み落としや取りこぼしがあってはいけないので、特に集中して読まなきゃいけない。それを半年間やり切ったのもすごいことです。

 

「まいつき短歌祭」の運営費について

牛:メインの選評の他にも、歌集やギフトカードなど、副賞が豪華ですよね。

武田:豪華な方が楽しいですからね。

牛:たとえば歌集を賞品にする際は、ゲスト選者から謹呈してもらったんでしょうか。

武田:いえ、すべて買い取りです

牛:他の賞品もありますし、ゲスト選者に支払う謝礼もありますよね。差支えなければで結構ですが、赤字運営になりませんでしたか。

武田:いえ、おかげで赤字にはなりませんでした。もちろん、儲かることはありませんが、無理のない範囲で行えました。

牛:それもすごいことですね。

武田:最初は不安でした。noteは有料ですし、僕自身が短歌をはじめて1年ほどで「お前誰やねん」と思われていたでしょうし、赤字で終わる可能性もありました。

牛:しかも最初から「全6回」と公表していたから、第1回から結構な赤字が出ても6回分やりきらなきゃいけない。

武田:本当にそうです。

牛:正直に言えば、ゲスト選者に謝礼なしでお願いすることもできたと思うのですが……。

武田:タイトなスケジュールでの選歌ですし、特選歌には800字程度の選評を書いてもらうので、謝礼なしではお願いできないですね。高額の謝礼を出せてはいませんが、お互いに気持ちよく取り組むために必要なことだと思います。

やっぱり、有料の記事を購入してもらうには読み物として面白くしないといけないので、800字の選評が必要でした。

牛:まさしくここがすごいと思いました。最初に武田さんがおっしゃったように、細部に新しいアイデアはない、というのはその通りです。出詠料を集めてそのお金を運営費とする短歌のコンテストもよくあって、そのモデルのアレンジの形式だとは思います。

ただ、短歌投稿の多くの場合、投稿された短歌を掲載することによって、投稿者に雑誌なりの購入を促す仕組みのはずなんです。「まいつき短歌祭」は800字の選評によって記事の読み物としての価値を引き上げて、noteを購入してもらう仕組みです。その価値を付加する選評を書いてもらうからには、きちんとした謝礼が必要で、そのためにnoteがこの値段になっている。トータルの設計がよく練られています。やはり、「まいつき短歌祭」はこの選評が核だと思います。

武田:新聞などの投稿だと、仕方のないことですが選評がとても短いですよね。初回の前に大森さんに相談した際、選評の分量について800字くらいが良いんじゃないかという提案もいただいていました。たしかにボリュームがあるほうが読者の方も嬉しいんじゃないかと思って、この形になりましたね。

牛:新聞やテレビのメディアが持つ発信力には当然及びません。したがって、別の価値が必要で、800字の選評がとても効いているんじゃないでしょうか。

 

「祭」であること

牛:「まいつき短歌祭」のネーミングについてもお聞きしたいです。「はじめに」を読むと「お祭り」という言葉に重心がかかっているように感じました。

武田:あんまり選者と投稿者の上下関係が固まらないようにと考えました。選ぶ・選ばないの関係を強調したくなかったというか。なので、選歌前に匿名で全投稿歌を公開したり、ツイキャスの配信などで選歌とは別に投稿歌について語ったりと、相互的なコミュニケーションがとれるようにと企図しました。選歌している間も楽しんでもらえたらいいなあと思って。

投稿歌を公開するだけだと引用されるのは少なかったんですが、第3回から「#推し短」という企画をはじめたら、引用や評が活発になりました。ミニゲーム的に楽しんでもらえたんじゃないかと思います。

牛:なるほど。選者による選歌だけでなく、スピンオフ的に色んな楽しみ方をしてもらうのは、参加者にとってもより主体的に関われますね。

短歌投稿の場は、皮肉的な言い方をすると「送る・選ぶ」だけの単なる「選歌サービス」に陥ってしまうことがあります。そうならないための、とても良い取り組みだと思います。

武田:そうですね。そうなってしまうと面白味に欠けますね。最初はうまくいくか分かりませんでしたが、良い試みだったと思います。

牛:かつて「毎月歌壇」(短歌投稿のネットプリント。運営は石井僚一。2016年~2019年)という短歌投稿のネットプリントがありましたが、ご存知でしたか。

武田:いえ、知りませんでした。聞いたことはあったかもしれないですけど……。

牛:結果的にですが、「歌壇」と「短歌祭」のネーミングの違いが企画の内容をよく反映しています。投稿の場には「~~歌壇」と名前が多いですが、「壇」は「祭壇」「教壇」のように、「一段上の場所」の意味を内包する言葉なので、「まいつき短歌祭」のコンセプトにはそぐわないですね。

 

「800字選評」の意味

牛:繰り返しになりますが、「800字選評」が本当にすごいと思いました。もっと言えば、それが賞になると考えたのがすごいと思うんです。

数年前にTwitterの短歌界隈で、「ガチ勢・エンジョイ勢」という言葉が見られました。歌会などでトラブルになることがあって、ゲームの界隈みたいにガチ勢とエンジョイ勢で棲み分け方がいいんじゃないか、という意見です。

武田:まあ、言わんとすることは分からないでもないですね。

牛:そうです。棲み分けが可能であればお互いに快適だろうとは思います。でも、抵抗感を覚えます。

というのは、僕自身、分類すればエンジョイ勢と見なされるでしょうし、色んなイベントを運営してきて、その多くはそれこそエンジョイ勢と認識される人たちをお客さんにしたものです。
そうした経験のなかで、エンジョイ勢とされる人たちの「短歌のことをもっと深く知りたい」という欲求に触れてきました。江戸雪さんや尾崎まゆみさんに河野裕子や塚本邦雄の解説をしてもらったりとか、歌集批評会をしたりとか、そうした機会を作ると、みなさん面白がって楽しんでくれる。決して、都合の良い部分だけで浅くエンジョイしたいのではなくて、より深く知ることをエンジョイしている。

だから、棲み分けはノンストレスで快適かもしれないけれども、かえって短歌の世界を貧しくさせる考え方なんじゃないかと、もやもやと感じていました。

「まいつき短歌祭」もこの分け方をするとすれば、ややエンジョイ勢寄りの企画ですよね。

武田:コンセプト的にはそうですね。

牛:そのコンセプトのなかで、800字の選評を賞とするだけの価値を参加者は感じてくれるはずだ、という認識がすごい。もっと言えば「よくぞやってくれた」という思いです。

しかも、赤字になっていないのは、その認識が正しかったという証明でもあります。だって、採用されなかった人が他人の歌の選評を読むためにnoteの記事を購入しているわけですよね。

武田:それは間違いなくありますね。それこそ、選ばれていない参加者の方から「この選評は面白かった」と言ってくれたこともあって、良い循環が作れたなと思います。

 

印象に残った短歌の紹介

牛:「まいつき短歌祭」に投稿された短歌を何首か紹介いただけますか。

かなしみを所定の位置に置くだけで歯医者のうがいみたいに泣けた/カラスノ
第1回・自由詠 大森静佳・特選

武田:歯科で紙コップを置くとうがい用の水が出てくるように、悲しみがその一連のシステムに組み込まれてしまうという。目の付け所が素敵な歌です。僕も佳作に選びました。大森さんの選評がすごく良くて、それも含めてよく憶えています。

 

は はは 春がきたよと吃る子にだけ駆け足で来る春がある/夏川凛子
第1回・自由詠 武田ひか・入選

武田:一首で物語が完結しています。春の景の美しさと主体の眼差しの優しさに加えて、一字空けを繰り返す初句のギミックも巧妙です。ぎりぎりまで特選にしようかとも思った歌で、嬉しい悩みでした。

 

大富豪のローカルルール聞きながら知らないきみの時間を見てる/薄暑なつ
第2回・自由詠 武田ひか・入選

武田:これも完成された一首です。暮らしてきた時間を言葉や行動から感じ取って、それを愛しく思う、その発想自体は短歌では珍しくないですが、大富豪のローカルルールは日常性のある題材で共感性が高いです。

 

まえぶれは静かに上がり目の前にあの子のトスのボールのひかり/ネコノカナエ
第3回・自由詠 武田ひか・特選

武田:テニスのシーンだと思いました。テニスのサーブの時の一瞬の静寂が的確に表されています。「まえぶれは静かに上がる」の表現が、個人的体験を普遍化して短歌の価値をもたらしていると思います。

 

い・ろ・は・す・を・そ・そ・ぐ ステンドグラス風カップに夏がちらついている/藻太郎
第3回・自由詠 武田ひか・入選

武田:夏のなかにいる主体のワクワク感が良く表現されていて、印象深い一首でした。導入は水が注がれるリズムであり、主体の感情ともリンクしているようです。夏のきらめきが伝わってきます。

 

手を高く振り上げてからあなたの言うさよならの奥にある製鉄所/篠原
第6回テーマ詠「火」 千種創一・武田ひか特選

武田:別れのなかにある本質的な寂しさが、最後の「製鉄所」に収束されています。歌の韻律も特徴的で良いです。韻律感覚や本質を掴み取ろうとする姿勢には、僕自身の作歌にも影響を受けました。

 

牛:本当に良い歌が多いですね。どういった人たちが投稿していましたか。

武田:短歌をやっている方たちだと、Twitterから幅広く投稿してくれました。それこそ先ほどのガチ勢・エンジョイ勢の区別なく。あとは、短歌をしていない僕の知り合いも投稿してくれています。

牛:短歌のバリエーションにも表れていますね。

 

今後の展望について

牛:武田さんご自身の感想として、「まいつき短歌祭」を運営してどうでしたか。

武田:楽しかったですね。想像していた以上に色んな方が短歌を楽しんでくれたことが良かったです。投稿していない人がnote記事を購入して読んでくれたり、普段は短歌を作っていない人も投稿してくれていたりして、ねらいがひとつ達成できたのかなと思います。それが一番、嬉しかったかもしれません。

牛:「まいつき短歌祭」は、後は合同歌集の発行が控えるのみですが、その後の展望は考えていますか。セカンドシーズン的な。

武田:どうでしょう。映画の続編は駄作になっちゃうのも多いですから。どうせ何かするなら新しいことをしたいと考えています。「まいつき短歌祭」のフォーマット自体は、色んな方に楽しんでもらえるものを作れたんじゃないかと思うので、またいつか同じような企画をするかもしれないですが、直近の予定はありません。

牛:他にしたいことや、あるいは自分が行うのではなくてもあればと望む企画はありませんか。武田さんが現在の短歌の世界をどのように見ているかに興味があります。

武田:短歌に限りませんが、新人賞以外にも色んな人を発掘する企画があればいいのにと思うことはあります。根っこの部分を緩めることでもっと色んな人が現れて活発化するんじゃないかと思うんです。

牛:短歌界は「抜擢」はあっても「発掘」はあまり見られないですよね。新人賞がその役割を果たしているからと言われればそれまでですが。

武田:『ILLUSTRATION』(翔泳社)という本があります。その年に注目されるべきイラストレーター150人を無名、有名問わず集めて収録した本です。短歌だけで作れるかどうかはともかく、このような本をいつか作りたいなと妄想しています。

牛:それは間違いなく面白いですね。たとえば、『短歌タイムカプセル』は「一千年後に届けたい現代短歌アンソロジー。」というキャッチコピーなので、あと1000年は次の本を発行できない。それは大げさとしても10年後に出しても、収録される顔触れはほとんど変わらないはずです。そうではなくて、その瞬間その瞬間の記念碑的な本ならもっと様々な歌人を載せられますね。『ILLUSTRATION』は毎年、8割9割のイラストレーターが入れ替わりますよね。

武田:そうです。「その年の」という縛りは面白いと思います。私は今、大学院生ですが、修了後は出版社で働きたいと考えています。いつか作れないかなあと密かに思っています。

牛:それはぜひ作ってほしいです。

 

おわりに

「まいつき短歌祭」は思いつきではじめた企画とのことでしたが、それでもこれだけ参加者へのホスピタリティが高く、かつ統一したコンセプトでまとまっているのは、武田さん自身が広い視野を持ち、常に参加者の視点で思考しているからだろうと思われます。

今回は割愛しましたが、他にもパートナー企業からの協力を得るなどしている点も見逃せません。今後もっと大きな、あるいは面白いことをしてくれそうな方です。ぜひご注目ください。

 

インタビューされた人

武田ひか

いつもオロオロしています。短歌が好きです。「まいつき短歌祭」「絵筆と短歌」「たてがき」等を企画。

Twitter: @sunamerinikki

note: https://note.com/sunamerinikki

自選短歌

君の打つひどくあかるい相槌に火傷のような部分があって

 

インタビューした人

牛隆佑

1981年生まれ。フクロウ会議メンバー。

これまでの活動はこちら

Twitter:@ushiryu31
blog:消燈グレゴリー その三

自選短歌

朝焼けは夜明けを殺しながら来る魚を食らう魚のように

 

記事で紹介した短歌企画

武田ひかさんの短歌企画
  • まいつき短歌祭: 短歌のコンテスト・イベント。企画は武田ひか。2021年
記事内で言及した短歌に関わる企画
  • うたらば:短歌と写真のフリーペーパー。発行人は田中ましろ。2010年~
  • 青春短歌甲子園:青春がテーマの短歌賞。主催は君野シリウス。2020年~
  • 覆面短歌倶楽部:匿名の短歌応募企画。中の人はあの井。2020年~
  • 毎月歌壇:短歌投稿のネットプリント。運営は石井僚一。2016年~2019年

 

「短歌の企画者に話を聞いてみた」バックナンバー

第1回 「あみもの」御殿山みなみさん

第2回 「うたつかい」嶋田さくらこさん

第3回 「歌会たかまがはら」天野うずめさん

第4回 「最適日常」月岡烏情さん

第5回 「CDTNK(カウントダウンタンカ)」泳二さん

第6回 「うたそら」千原こはぎさん

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