【連載】宇都宮敦「現代短歌」作品連載を読む!<6>スローフォックス

コラム

こんにちは、橋爪志保です。

こちらは、「現代短歌」に連載されている宇都宮敦さんの作品の鑑賞評の記事の第6回目となります。今回もまたしても少し書くのが遅れてしまって申し訳ありません!!

今回は7月号となります。「スローフォックス」24首、一緒に手に入れて早速見てみましょう。

*バックナンバーは現代短歌社のサイトから購入できます。

橋爪志保

2013年に作歌を始める。京大短歌を経て、現在は同人誌「羽根と根」所属。第二回笹井宏之賞にて永井祐賞受賞。2021年4月に第一歌集『地上絵』上梓。Twitter @rita_hassy47
note https://note.mu/ooeai
通販 https://hassytankashop.booth.pm/

自選短歌

I am a 大丈夫 ゆえ You are a 大丈夫 too 地上絵あげる

 

すべて過去形の文末

今回の作品を見て、ぎょっと驚きました。結句の最後が、24首すべて「~だった」「~てた」「~いった」という過去形で終わっていたからです。なんたって、迫力があります。

口語短歌って一般的に語尾が単調になりがちだったりするので、わたしなんかは歌をつくるとき、死に物狂いで似た文末を避けようとしていたのですが、こういうやりかたもあるのか、と息をのみました。

でも、過去形は過去形でも、何種類かの過去があるような感じがするな、ということに今回気づいたような気がします。たった今起こった出来事を過去のかたちで言っているときから、回想のような過去のシーンまで、けっこう文末の「た」のレパートリーってあるんだな、というか。同じ時制で描かれているのに、出てくる歌のモチーフがさまざまだからでしょうか、なんだか色とりどりにさえ見えます。

 

満足そうに

 

その人は満足そうにうちのネコたちの名前をメモしていった

 ネコたち」ということは、複数いるんでしょうね。でも、メモするってちょっと不思議です。たとえば家に遊びにいって「ネコたち」を見かけて、名前をたずねても「メモ」はあまりしないような気がします。名前をきいて、「そうなんだ~かわいいね~」くらいのやりとりはあるかもしれないけれど……。

でも、なんか、「メモする」というところに、その人の人格みたいなものがにじみ出ているような気もします。「メモ」するのは、決して「名前入りのネコグッズを贈りたいから下準備に」とか、「日記のネタにして書きたいから」とか、そういう実用の目的が理由ではないような気がします。ただ、その「ネコたち」の名前を覚えたいから、な気がするのです。

満足そうに」というところがポイントで、この短歌の読み手も「満足」した気分になれる歌です。

 

コンセントと踊り

 

コンセントを探してたはずそれなのに釣り堀のほとりふたり踊った

 日常で「コンセント」を探すことって、近年すごくよくあることになったと思いませんか。スマートフォンが普及して、みんなが充電に飢えるようになったことが、まず理由として挙げられるでしょう(スマホって、バッテリーの消耗が激しいので、すぐに一日もたなくなったりしますよね)。
まあ、ここでは「コンセント」を探す理由は書かれていないので、何とも言えませんが、電子機器を使うこととは対極のこと(?)を結局主体はしたようです。

釣り堀」って、要は水なわけで、踊ったりなんかしたらあわや落ちてしまいそうな気もするのですが、「ほとり」「ふたり」の韻から、なんとも楽しそうな踊りの姿がうかがえます。短歌で「踊り」が使われるときって、あまり本当に踊っている感じがしないときも多いですよね。踊っているポーズをとる、という感じだったり、ふざけて「踊る」と言っている感じが強いときもある中、宇都宮さんの連作のなかに出てくると、わりと本当な感じがします。

 

まぼろしのボール

 

突き立てたひとさし指にまぼろしのバスケットボールがまわって見えた

 お洒落な歌だと思うし、キュートな歌だなとも思います。歌意は文字どおりですが、「ひとさし指」を立てるときって、得意げなポーズをとっているような雰囲気があって、「バスケットボール」がまわっていても、おかしくないような感じがするというか。

「まぼろし」といえば、こんな歌も連想しました。

ボウリングをする前日は透明のボールとレーンがどこにも見える/谷川由里子

方向性はちょっとちがうけれど、似たドキドキを感じました。うれしい幻覚の歌です。

 

 

「ひも」を与えられる「ご機嫌さ」

 

春用におろしたばかりのパーカーのひもを引き抜きネコに与えた

パーカーのひも」とは胸についているひものことでしょうが、「おろしたばかり」にもかかわらず、「ネコ」のためにほどこしてやるなんて、ちょっともったいない気もします。

でもその「あっ、もったいな……」みたいなほんの些細な感情が、おそらくこの歌をよくする数滴のエッセンスになっているような気がします。買ったばかりの「ネコ」用のおもちゃを「ネコ」に与えるのでは、きっとここまでの「ご機嫌さ」に近いような快感は得られないと思うのです。

もともと「ネコ」のためでないものを与えるくらいの気前のよさを持っている「気分」であることが、ここではとても重要なのです。

 

おわりに

いかがだったでしょうか。

連作の歌を全部読みたい!という方は、ぜひ「現代短歌」7月号を読んでみてください。

一部の書店または現代短歌社のサイトから購入できます。

それではまたお会いしましょう!

 

この記事を書いた人

橋爪志保

2013年に作歌を始める。京大短歌を経て、現在は同人誌「羽根と根」所属。第二回笹井宏之賞にて永井祐賞受賞。2021年4月に第一歌集『地上絵』上梓。Twitter @rita_hassy47
note https://note.mu/ooeai
通販 https://hassytankashop.booth.pm/

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<0>はじめに

<1>ゴースト

<2>第二宇宙速度

<3>ディスコティカ

<4>ショートステイ

<5>ハーフ・アスリープ

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