【連載】宇都宮敦「現代短歌」作品連載を読む!<0>はじめに

コラム

ごあいさつとこの連載について

こんにちは、TANKANESS編集委員の橋爪志保です。

ふだんは短歌をつくったり、短歌に関する文章を書いたりしています。

TANKANESSで記事を書くのははじめてになります。今後どうぞよろしくお願いいたします。

 

早速本題に入りますが、みなさんには、好きな歌人がいますか?

いるよ、という方、まだはっきり歌人を推せるほど短歌に詳しくないよ、という方、さまざまだと思います。

わたしも短歌について多くを知っているわけではありませんが、好きな歌人を挙げてみて、と言われたら、真っ先に挙げる名前があります。それは、宇都宮敦さんです。

 

宇都宮さんの最新の作品は、「現代短歌」10月号からスタートの作品連載で読むことができます。

わたしのこの記事は、宇都宮さんの作品連載を読んだ感想や評を書いていく、全8回の連載になる予定です。

今回は連載評の前の第0回と題して、宇都宮さんが去年刊行なさった歌集から歌を引用し、その魅力に迫っていきましょう。

でかい歌集と世界の肯定

2018年に現代短歌社から刊行された宇都宮さんの第一歌集『ピクニック』。B5サイズの大きさと分厚さ、真っ黄色の表紙が目立つ、存在感ありまくりの一冊なんですが、そこに描かれているのは、「世界」への軽やかな肯定と、「君」へのシンプルな心よせです。

 

『ピクニック』はでかい歌集だ

 

だいじょうぶ 急ぐ旅ではないのだし 急いでないし 旅でもないし

 

代表的な歌なので、知っている方も多いかもしれません。

急ぐことと旅であることが、巧みにずれながら二重に否定されています。「だいじょうぶ」は、下手に使うと非常に無責任極まりない言葉になりがちです。しかし、口語を越えたしゃべり言葉のなめらかさや、確固たる意志を持った一字空けが、「だいじょうぶ」をがっしりと支えています。読んでいて、しんみりと、でも勇気づけられる歌です。

「君」とぼくの関係性

 

月をみる君の背中によりかかりビルにうつった月をみている

 

宇都宮さんの歌には「」というワードがよく出てきます。でも、よく出てくるにもかかわらず、「君」という人物像がぬるっと具体性を持って出現することはまずありません。それは何首か歌を見ないとわからないところもあるので、ここでは何とも言えない感覚なのですが……。

でもその感覚は、主体(歌の主人公・ぼく)による、「君」への真摯な態度がもたらす二人の距離感によるものではないのか、とわたしは考えています。

 

この歌では、二人は同じ月を見てうっとりしているわけではありません。しかし、同じ月を見ている歌よりも、より強固な信頼に満ちた二人のような気がするのです。なぜなら、わたしには、本物の月を見ることを「君」に譲っているかのように見えるからです。この、一歩引いた目線で「君」を愛し、二人の「わかりあえなさ」をそのままにしておく(ような比喩と捉えてもよいような気がします)姿勢には、とても好感が持てます。

 

振り向いたけれども猫はいなかったけれども君がみたならいいや

 

こちらも「けれども」が2回も使われた斬新な歌ですが、「」という相手に対する感情の品の良さは一貫しています。そう、品がいいんですよね。男性(のように思われる)主体と、女性の(ように思われる)「君」の歌って、一般的に、下手したら無意識下で暴力的になっちゃったりすることも多いのですが、それが全然ない。相手を尊重している様子に、とても安心して読むことができます。読者の目の前に「君」が無慈悲に晒されることのないように、「君」を守りながら歌が紡がれているような気すらします。

冗談!ネコ!かわいい!

 

ネコかわいい かわいすぎて町中の犬にテニスボールを配りたくなる

 

『ピクニック』にはネコの短歌がたくさん出てきます。どのネコもコミカルで、すごく愛されていて、生き生きと描かれています。この歌では、ネコのかわいさ余って、主体は奇行に走りたい欲にかられてしまっています。ネコじゃなくて、犬に配るのかよ、しかもテニスボール配ってどうするんだよ、などとたくさんツッコミをいれてしまいたくなりますよね。犬一匹一匹の口に順番に「ふがっ!」「ふがっ!」とボールを押し込む様子を想像しただけで、笑いがこみあげてきます。

こういう冗談めかした歌も、宇都宮さんの得意技です。

もっと知りたい方へ

いかがだったでしょうか。

この文章だけでは、魅力を全部はなかなか語りつくせないのですが、少しでも宇都宮さんの歌に興味を持ってもらえたら、うれしい限りです。

また、別サイトになりますが、以下のURLからはさらに一歩進んだ『ピクニック』歌集評を読むことができます。(わたしが2019年3月に書いたnote記事になります。)

宇都宮敦『ピクニック』について考える

興味がおありの方はぜひこちらも読んでいただければ幸いです。

 

それでは、今回はこのへんで。

次回からは「現代短歌」の作品連載の鑑賞にうつります。

どうぞよろしくお願いいたします!

この記事を書いた人

橋爪志保

歌人。2013年に作歌を始める。京大短歌を経て、現在は同人誌「羽根と根」所属。その他の参加同人誌に、「鴨川短歌」「はるなつ」「あきふゆ」など。著作に、合同歌集『ベランダでオセロ』。
Twitter @rita_hassy47
note

自選短歌

I am a 大丈夫 ゆえ You are a 大丈夫 too 地上絵あげる

タイトルとURLをコピーしました