TANKANESSライターのなべとびすこです。そろそろみんな思ってますよね。
旅行に行きたい…
遊びに行きたい……
そして出かけた先で短歌を詠みたい……
つまり、吟行(どこかに出かけて短歌や俳句を作ること)がしたい……
はぁ〜〜……
ということで桃太郎電鉄をしながら短歌を詠みました!
吟行とは
吟行は、どこかに出かけて短歌(や俳句や詩)をつくることです。出かけた先で見つけたものを題材にして短歌を作ります。
そして、桃太郎電鉄は電車で全国を旅してまわるゲーム。ゲームの中には四季があり、四季によってまわりの景色も変わります。(※基本的に短歌に季語は必要ありませんが、季節を詠むこともあるので)
外に出かけられないご時世で吟行をするにはぴったりのゲームですね!!
※ちなみに、大人気webメディア「オモコロ」ではずいぶん前に「ゲーム吟行」の記事がUPされていました。この記事が公開されたときに「この企画、自分で思いつきたかった…」と思いました。
今回はNintendo Switch Online(オンラインで友人と一緒にゲームを楽しめるサービス)とZOOMを併用し、3人で桃太郎電鉄をしながら短歌を詠みました。
*今回は桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番! ~をプレイしました。
参加者を募集したのですが、
- Nintendo Switchを持っている
- Nintendo Switch Onlineに加入している
- 「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番! ~」のソフトを持っている
- 短歌を詠んでいる
という4つの条件を満たす人物は私の周りには2人しか見つかりませんでした。桃太郎はマックス4人で遊べますが、3人で遊びます。
参加者
なべとびすこ(鍋ラボ)
TANKANESS編集長兼ライター。短歌カードゲーム「ミソヒトサジ<定食>」「57577 ゴーシチゴーシチシチ(幻冬舎)」、私家版歌集『クランクアップ』発売中。
Twitter @nabelab00
note https://note.mu/nabetobisco
通販 鍋ラボ公式通販
自選短歌
ふるさとと呼ぶには騒がしすぎる町 でもふるさとを他に知らない
のにし
気の向くままに歌会やイベントに出没しています。趣味は古本屋巡り。詰まった本棚を見ると、ときめきます。
Twitter @no_nonishi
自選短歌
心には大きな鳥が飛んでいて横切るたびに木々がざわめく
桃太郎電鉄吟行スタート!!
今回は3年間の短期決戦を行います。ゲームは4月からはじまります。毎月自分のターンにはサイコロを振ったりカードを使ったり、各地で物件を買って資産を増やしたりします。3月の「決算」のあとに、5分時間をとって短歌を詠み、互いに共有しました。
最初の目的地は淡路島。
東京から1億円をもって兵庫県の淡路島に向かいます。
今回は「吟行」なので、旅をしながら短歌を詠むことになるのですが…
全員最短経路=空路 で淡路島を目指してしまったため、短歌に詠み込む素材がないままゲームが進みます。
ただ無闇に青い海の上で、赤マス(持ち金が減る)と青マス(持ち金が増える)と黄マス(カードがもらえる)だけの風景が続きます。桃太郎電鉄の醍醐味、いろんな町の物件を買うこともできず、カレンダーがめくられていきます。
これはただのすごろくでは?
桃鉄的にも短歌的にも何もできていないなか、私は「スリの銀次」にお金を全額盗られました。海上で詐欺すんな。
無事空路を終え、兵庫県在住ののにしさんが無事淡路島に到着!!
何もない空路でただのすごろくをしていた私たちにとっては初の大きなイベントです。
淡路島の物件を全て買い占めるのにしさん。
そしてスリの銀次により持ち金0円になったまま貧乏神までついてしまった私。
次は北海道の函館を目指します。
私はすでに借金があるので、冬にも関わらず赤マスにとまります。(※冬場の赤マスはお金がめちゃくちゃ減ります)
ただでさえマイナスの多い冬場に、マイナス金額5倍のイベントが起こりました。
不運が続きます。
1年目は私だけが散々な結果になり、決算を終えました。
「決算」が終わったので一旦ゲームを中断して5分程度で短歌を詠みます。
この1年はみんなが空路や海路を選んだことで、短歌に詠む素材が少なくて苦戦しました。
桃鉄1年目でできた短歌
売るものを持たない僕が前を見る逆転のチケットは持っている/なべとびすこ
想像もつかない味の札幌のちくわパン屋をとりあえず買う/岡田奈紀佐
大阪へ降り立った時の安心感ゲームの中に故郷はあった/のにし
ゴールの函館に向け、すでに北海道に到着している岡田さんは札幌の「ちくわパン屋」を購入。早速短歌に詠み込んでいました。
ちくわパンはテレビでは聞いたことはあるものの、食べたことはない現地の名産。旅行をしているわけでもないのに、ほかの土地の名産を自然に短歌に詠み込めるのは桃太郎電鉄吟行ならでは、という感じがします。
のにしさんの短歌も「大阪」の地名が詠まれています。ゲームと現実が自然に繋がっていて良いですね。
2人の短歌を見て「桃太郎電鉄吟行」はこういう短歌を詠めば桃太郎電鉄を楽しめるんや!という方向性が見えた気がします。
私も早く地上に戻って地名や物件を読み込みたい…
2年目スタート!
これまで散々だった私はなんとか函館に到着!
借金を函館の町の皆さまに返してもらい所持金0円に戻りました…!ありがとう函館!
早速函館の町に還元したいものの、所持金0円のため何も買えませんでした。
ラッキーバーガーは「ラッキーピエロ」というハンバーガー屋さんのことでしょうね…北海道で一度食べて本当に美味しかったので買いたかったです。大人になって桃鉄をすると、いろんな名産や企業がわかるので、楽しみが増えますね。
そんななか岡田さんは着々と資産を増やし、10億円を突破します。
私は貧乏神がキングボンビーに進化して、さらに借金を増やします。
マジで勘弁してくれ〜
桃鉄2年目でできた短歌
住民が花火をあげるマイナスをゼロに戻して函館の駅/なべとびすこ
マクドよりラッキーな方を選びたいピエロのように笑って過ごす/なべとびすこ
底なしの借金沼で咲き誇る淡路島のタマネギ畑/のにし
先がよく見えないままにサイコロを振ったたまには二つも振った/岡田奈紀佐
2年目も散々だった私でしたが、こうして短歌を見るとのにしさんも借金沼にいて、低調であることがわかります。
桃太郎電鉄では、借金をすると物件を売り払う必要があります。しかし、「農林」のカテゴリーにある淡路島のタマネギ畑は売ることができない(=資産として残る)のです。
この短歌により、「やっぱり農林は買うべき!」と全員が再認識しました。短歌がゲームの戦法を考えるきっかけになるのは感慨深いですね。
岡田さんの短歌は、「先がよく見えないままにサイコロを振った」という言葉で、淡路島から函館までのゴールまでが遠いなかでの旅が表現されていました。「たまには二つも振った」は「急行カード」を使うことでサイコロを2つ振ることができるルールも反映されています。
どちらもゲームの特徴をよくあらわした短歌で、「2人ともすでに桃太郎電鉄吟行やったことある…?!」と思いました。
桃鉄3年目でできた短歌
貧乏神およびキングボンビーの被害を受けず、着々とゴールする岡田さん。
金沢の次の目的地は長崎。
これまた遠方への旅となり、なかなかゴールが見えません。
その一方で、のにしさんにもキングボンビーの恐怖が襲いかかります。
そのうえ、キングボンビーによってマイナスのマスしかないボンビラス星に連れていかれてしまいました。
普段私より運が悪い人を見ることはあまり無いのでびっくりしました。
ボンビラス駅という最悪の駅しかない星で借金地獄に陥るのにしさん。
最後の月、3年目の3月に見事ボンビラス星から脱出するのにしさん。
そして同じく3月に長崎にゴールする岡田さん。
なんだかんだで結果はこうなりました。
さまざまなアップダウンを繰り返しながら、3年間のグラフはこんな感じでした。私もキングボンビーの登場で抱えた借金を返すことができないまま終わりました。
3年間で2人が多額の借金を抱えて終わるシビアな回でした。
桃鉄3年目で作った短歌
ボンビラス星に行かない僕たちの平和な日々を終えて3月/なべとびすこ
借金で何も買えない日々の中ゴールは用意され続けてる/なべとびすこ
ゆっくりと陸路を進む長崎のあかりは遠い3月の風/なべとびすこ
安全なほうへと進む長崎のカステラたちが見守る中を/岡田奈紀佐
荒涼なボンビラス星一人旅失うものはもうなにもない/のにし
のにしさんのボンビラス星への旅行が最大のトピックとなったことが短歌からもわかります。
あと、「長崎が遠い……」というみんなの共通認識も短歌に含まれています。
31音しかない短歌を少し詠んだだけで、1年間の振り返りができる。
これが桃太郎電鉄吟行の良いところです。
また、ゲームが好調であれば短歌も詠みやすいこともわかりました。土地にとまり、物件を買うことで詠みたいトピックが生まれます。
逆に、ボンビラス星にまでいくとそれはそれで短歌が詠めます。ただゆるっとした不調が続くと短歌は作りにくいよね…という話も出ました。
このあたりは実生活で短歌を作るときとも似ていますね。
2回目の3年決戦スタート!
とっても楽しかったので2回目もやりました。ここからは短歌と補足のみお送りします。
桃鉄1年目で作った短歌
直江津の鱈めしをまた失ってゼロから進む2年目の春/なべとびすこ
鱈めし屋がブームになるものの、3月に貧乏神に売り払われてしまいました。
取り返しのつかないことは多々あって冬に真っ赤なマスへ飛び込む/岡田奈紀佐
「とりかえしカード」という、持っているととりかえしのつかないことになるカードの被害がのにしさんに起こりました。
一方で冬に赤マスに飛び込み、岡田さんは借金を抱えてしまいました。
「冬の赤マスに飛び込む」って危険なことのたとえとしてことわざになってもおかしくないですね。飛んで火にいる夏の虫の類義語にしましょう。
再び函館がゴールになりました。遠かった…!
貧乏な神に憑かれてまだ進むなかなか遠い函館の夜/なべとびすこ
青森でなまはげが出ました。なまはげもサイコロを振って進んでました。
なまはげはサイコロ振って徒歩で来る冬の線路は冷たいだろう/のにし
桃鉄2年目で作った短歌
なまはげも貧乏神もついているひとりではない北の町並み/なべとびすこ
売るものがなくて安心してしまう溶けてしまった金銭感覚/のにし
借金を恐れなくなりサイコロを振っても遠い函館の地/岡田奈紀佐
湯気は濃く白く僕らを包むだろう塩ラーメンに救われている/なべとびすこ
私の塩ラーメン屋がブームになっていました。
あこがれの農林物件一件も買えないままに最後の春へ/岡田奈紀佐
今回は全員「農林」物件を強く求めながら、この回ではうまく農林物件のある駅に止まれませんでした。
桃鉄3年目で作った短歌
もう仲間みたいな貧乏神といてシロノワールを一緒に食べる/なべとびすこ
名古屋でコメダ珈琲店が買えた…!ほかの物件はけっこうぼかしてるのになぜか固有名詞がそのまま入ってるコメダ珈琲。コメダ珈琲を読み込めず、シロノワールという品名を詠みこみました。
ちなみに2回目の3年プレイ、私は19ヶ月貧乏神と一緒にいたらしいです。こわ…(なぜか収益はずっとプラスでした)
どの地にも縁もゆかりもなくなって静かに走る鈍行列車/のにし
19ヶ月貧乏神と一緒にいた私より不運だったのはのにしさん。なまはげやスリの銀次など、さまざまな不幸におそわれ低調でした。
安来にはどじょうすくい教室がある(二百万)もちろん買った/岡田奈紀佐
安来(やすき)という町にはどじょうすくい教室がありました。破格の200万!(たいていの物件は1000万以上します)
2回目はキングボンビーが現れず、無事全員黒字収益となりました。
以上で桃太郎電鉄吟行は終了です!
3時間半で3年コースを2回、そして短歌も1人6首以上詠むことができました!
どこにも出かけられなくても、私たちはオンラインで吟行ができる!!
ぜひNintendo Switch で桃太郎電鉄のソフトをを持ってる方は一緒に短歌を詠みましょう!というか、短歌を詠むためにNintendo Switchと桃太郎電鉄を買いましょう!
この記事を書いた人
なべとびすこ(鍋ラボ)
TANKANESS編集長兼ライター。短歌カードゲーム「ミソヒトサジ<定食>」「57577 ゴーシチゴーシチシチ(幻冬舎)」、私家版歌集『クランクアップ』発売中。
Twitter @nabelab00
note https://note.mu/nabetobisco
通販 鍋ラボ公式通販
自選短歌
ふるさとと呼ぶには騒がしすぎる町 でもふるさとを他に知らない
参加者
のにし
気の向くままに歌会やイベントに出没しています。趣味は古本屋巡り。詰まった本棚を見ると、ときめきます。
Twitter @no_nonishi
自選短歌
心には大きな鳥が飛んでいて横切るたびに木々がざわめく
TANKANESSの吟行企画
<ゲーム吟行>
ポケモンで短歌作って歌会してみた!〜大人になったポケモンマスターへ〜
<リアル吟行>