歌人&俳人コラボ吟行〜天王寺動物園〈中編〉

レポート

こんにちは、TANKANESS発起人、歌人のなべとびすこです。

今回は「歌人(短歌やってる人)と俳人(俳句やってる人)、一緒に吟行(ぎんこう)に行こう!」という企画の続きです。

前回の記事はこちら↓

歌人&俳人コラボ吟行〜天王寺動物園〈前編〉

全員で天王寺動物園を一周したので、ここからは個人行動。その間に短歌2首と俳句3句を作っていきます。

まずは自分が撮った写真を見返しながらネタになりそうなものをノートに書き出して整理します。

参考になるかわかりませんが、よく「短歌ってどうやって作るんですか?」と言われるので、私の作り方の例を挙げておきます。

短歌を作るときの方法はいろいろありますが、私は使いたいフレーズから考える場合が多いです。

たとえば、使いたいフレーズが、「新世界ゲートに向かう」なら、それを数えて

しんせかい/ゲートにむかう」と分けて5文字・7文字のセットとして考えてみます。

その場合、短歌ならば「五・七・五・七・七」のなかで3つ入りそうな場所があります。

脳内でこんな感じのことを考えています

その文字数に合わせて前後を足したり引いたり、ということをやります。

旧世界ザルを横目に新世界ゲートを探す」みたいな感じに足すと

「五・七・五・七」までが出来たので、最後にあと7文字足したら一応短歌のリズムになります。

(旧世界/ザルを横目に/新世界/ゲートを探す という区切り方です)

 

これでうまいこと完成した短歌を載せると「なるほど〜そんな感じで短歌ができるわけね」という感じの記事にできるんですが、この内容は「旧世界ザル」と「新世界ゲート」の対比がわかりやすすぎる気がして一旦保留…。

 

次に、メモにある

こちらでは動物をご覧いただけません」は、前編の記事で書いた掲示物の文言ですね。

こういう文言や定型文をいじって短歌に取り入れるときもあります。

数えてみるとリズムは

こちらでは/動物をご覧/いただけません → 五・八・七 なので、最初の五・七を考えて、後半に持ってくるという手もあります。(字余りにはなりますが)

そのパターンも頭の隅に置きつつ、その文言に対して感じたことのイメージを膨らましたり、別の角度から物事を見たりしていきます。

今回の場合の違和感は、世の中には展示される動物と、展示されない動物がいる、というところだと思います。

実際にこれを見たとき、雑草のなかに小さな虫がいて、それはほかの展示されている動物と同じように「生命」なわけですが、展示としての動物にはもちろん含まれないですよね。

ただ、それをダラダラ書くには31文字は短すぎるので、一旦こんな感じで作ってみました。

 

動物を展示してない檻のなか勝手に育つだけの雑草

 

この場合、実際に見えている、動物を展示してない檻のなかの雑草をほぼそのまま書いただけになりますが、一応五・七・五・七・七で短歌のリズムになっています。

自分の感情をあんまり入れていないタイプの歌になりますが、「勝手に育つだけ」の言い方に、なんとなく自分の感じたことを込めています。

 

ただ、動物の対比として「雑草」で良いのかな〜とかをいろいろ考えた結果、最終的にはこうなりました。

動物を展示してない檻のなか勝手に育つだけのアメーバ

とりあえず短歌はこれで一首できました。

 

猿コーナーで話していた、「人間に尻尾があったらどうなるか」みたいな話はこんな感じで2種類作りました。

 

あくびするだけでかわいいマンドリル尻尾を落とした僕たちよりも

 

もし尻尾あったらあったで楽しむよズボンの穴を星型にする

個人的には2首目のほうが私が普段作る作風に近い気がします。

ただ、あとでほかの皆さんからコメントをもらえる時間があるので、そういうときは個人的に「コメントを聞いてみたいほう」を選ぶことが多いです。

ということでマンドリルの方を提出することにしました。

 

問題は俳句。学校の宿題で作った覚えはありますが、そういう創作系の宿題が本当に苦手だったので、あまり覚えていません…。

短歌は五・七・五・七・七の三十一文字で季語が不要なので、三十一文字をフルに使えます。俳句は五・七・五の十七文字。ここに季語が入るので使える文字数が少ないんですよね。

短歌は自分の感情を込めやすいが、俳句は感情が入る隙間がない、というのはよく言われている気がします。

野住さんか木田さんのどちらかが「俳句は何年か経っても自分の作品を見返せるけど、短歌は何年か経つと恥ずかしくて見れない」のようなことを言っていたのですが、この「感情」の有る無しが関係しているような気がします。

そしてこの日、持ち物のなかに歳時記(季語が載ってる本)を入れてませんでした。

木田さんと野住さんには「大丈夫ですよ!インターネットで『季語』で検索したら出ます!」と言われたのですが、こういう検索には紙の本のほうが向いているのを実感しました…(木田さんと野住さんはもちろん持ってきてました)

 

ある程度使いたい単語の目処がついていれば問題ないのですが、それよりパラパラ見ながら、自分の気持ちや季節にあった言葉を探して使うほうが良い気がします。次に俳句を作るときは歳時記を持っていこうと思いました…。

 

この日は3月3日。ただ、雨が降ってきたりしてけっこう寒い日でした。

まずは使えそうな季語を書き出します。春の季語を中心に、寒さ的には冬に近かったので、冬の季語も調べてみました。

 

動物園を回っているときに、「どんな動物が季語になってるんですか?」って聞いたところ「鳥はだいたい季語」って言われました。鳥はだいたい季語らしいです。

あとはも季語、という話を聞いたので、そのあたりも含めて調べたりしました。

 

季語を調べたときに「春の雨」という季語があったので、これは絶対に使おう!と思いました。

なぜなら私が短歌を作るきっかけとなったミュージシャン、ハルカトミユキの曲に「春の雨」という楽曲があるからです。

春の雨/ハルカトミユキ(視聴できます)

 

ハルカさん自体も短歌をやっているので、もしかしたらその延長で俳句の季語からタイトルをつけている可能性もあるし、とりあえずこれは使おう!と思いました。

 

「春の雨」の意味をネットで調べたところ、

春に降る雨の総称。雨には概して陰鬱なイメージがつきまといがちであるが、この季語には春ならではの明るく暖かな雰囲気がある。なお、「三冊子」では陰暦正月から三月の初めに降るのを春の雨。それ以降は春雨と区別している。

きごさい歳時記 で検索しました)

ということで、雨だけど明るい雰囲気らしいので、それと良い感じの組み合わせになりそうな単語をいろいろ考えて、こうなりました。

旧世界ザルに届かぬ春の雨

動物園の猿のコーナーは檻があったため、雨は届かないはず、ということでこうなりました。「旧世界ザル」という単語がなんとなく取り残されたような、寂しさのある言葉の感じなので良いかなあと思いつつ、俳句は初挑戦なのでこれでいいのか不安なまま、とりあえず一句完成。

 

そんな感じで、不安でいっぱいになりながらも、季語を検索しまくりながらとにかく数を出していきます。

象はもういないんだけど春は来る

 

ハルカスとキリン見上げて雛遊(ひなあそび)

 

ライオンも桃の節句はまんじゅうに

 

挟まって生きるコアラに春疾風(はるはやて)

 

象はもういないんだけど春は来る は、後半をつけて短歌にしてしまったほうが良いような気がしたので一旦ボツに。

さっきも書きましたが、せっかくならコメントをもらいたい俳句を選んだほうが良い、ということで、普段は絶対使わないような難しい季語を頑張って使った2句を選びました。

 

ということで、私が今回の吟行で作った短歌2首と俳句3句はこちら。

 

動物を展示してない檻のなか勝手に育つだけのアメーバ

 

あくびするだけでかわいいマンドリル尻尾を落とした僕たちよりも

 

旧世界ザルに届かぬ春の雨

 

ハルカスとキリン見上げて雛遊(ひなあそび)

 

挟まって生きるコアラに春疾風(はるはやて)

 

後編では、再度全員で集合して、お互いの短歌と俳句にコメントしていきます!

この記事を書いた人

なべとびすこ(鍋ラボ)

「やってみたいを、やってみよう」を合言葉に、なんでもやっている歌人です。短歌のワークショップをやったりボードゲームを作ったりしながら、よくカラオケに行っています。

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かつらいす

なべとびすこさん主催の「短歌ど素人の会」をきっかけに、2014年から短歌をつくり始めました。知れば知るほど広がってゆく大きな海のような短歌の世界を、これからもゆるゆると旅していきたいです。

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野住朋可(のずみともか)

平成4年愛媛県生まれの会社員。
俳句雑誌「奎」副編集長。関西現代俳句協会青年部所属。

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木田智美(きだともみ)

1993年3月24日生まれ。大阪府在住。吹田東高校在学中に俳句甲子園出場。大学在学中に関西俳句会「ふらここ」入会。俳句雑誌「奎」同人。挿絵担当。句集に卒業制作「シュークリーム」(2015年、私家版)

ノート https://note.mu/kidatomomi

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