短歌ワークショップを企画するときに考えていること

コラム

歌人で社会人のなべとびすこです。短歌を発表する活動以上に、短歌のワークショップや短歌講座をしています。
私は歌人で社会人ですが、ワークショップデザイナーの資格を持っています(青山学院大学社会情報学部 ワークショップデザイナー育成プログラム(通称「WSD」)に参加)。短歌のワークショップをより良くするために毎週大阪から東京に行き、ワークショップの勉強をするストイックな半年間を過ごしました。

卒業から2年、コロナ禍もあって企画するワークショップはオンライン中心に切り替わりました。それでもなんとか短歌のワークショップを開催する機会をいただきました。

現在はワークショップデザイナーで学んだこと + 歌人としての考え + 社会人経験 の3つを合わせて、短歌ワークショップを企画・運営しています。

今回は私が短歌ワークショップを作る時に考えていることを書きます。
これから短歌ワークショップを企画する方や、短歌講座を企画する方、また、短歌以外でもワークショップの企画に興味がある方にも役に立つ内容になればと思います。

 

なべとびすこ(鍋ラボ)

TANKANESS編集長。短歌のワークショップをやったりボードゲームを作ったりしています。短歌カードゲーム「ミソヒトサジ<定食>」「57577(ゴーシチゴーシチシチ)」制作者。

Twitter @nabelab00

note https://note.mu/nabetobisco

通販  鍋ラボ公式通販

自選短歌

ふるさとと呼ぶには騒がしすぎる町 でもふるさとを他に知らない

 

短歌ワークショップのコンセプトを立てよう

私が大事にしているのは、短歌ワークショップのコンセプトです。
コンセプトとは

(企画・広告などで)全体を貫く基本的な考え方 

らしいですが、こう書くとふわっとした概念ですね。
私のなかでは「ターゲット」がワークショップ終了後に「どうなっていてほしいか」を言語化したものをコンセプトと呼んでいます。

ワークショップを依頼するのかされるのかで、流れが少し変わります。最終的には同じ筋道になるので安心してください。

 

依頼するのか/依頼されるのか

<依頼する場合>

  • コンセプト(ターゲット、目標)を自分で立てる
  • 会場の確保、料金設定、告知方法なども自分で決める
  • 協力者が必要なら依頼  
  • ワークショップ企画・告知・運営

 

<依頼される場合>

  • 求められている目標や条件(会場、備品、料金、協力者はいるかどうかなど)のヒアリング(打ち合わせ)
  • ヒアリングを元にコンセプトを立てる
  • コンセプトの提案、すり合わせ
  • ワークショップ企画・告知・運営

 

大きな違いは、自分でイチから企画を立てるか、企画を立ててほしい人のニーズを聞き出して提案するかです。

「依頼される場合」は、依頼者と参加者が異なることが多いです。

たとえば、依頼者は大学の先生で「うちの留学生に短歌を教えてほしい」という依頼です。このとき、参加者は短歌を知らない留学生です。
依頼者が短歌にやる気満々でも、留学生にとっては単なる授業の一環なので、「短歌に興味はない(知らない)けどとりあえず受ける」ことになります。

上記の場合、「短歌に興味がある人」が能動的に参加するような短歌ワークショップとは性質が異なります。参加者の短歌やワークショップに対する興味レベルが大きく変わるからです。
これはコンセプト作りにも大きく影響します。

 

ターゲットは誰か

コンセプトを立てる際、まず「ターゲット(参加者)は誰か」を考えます。
「短歌のワークショップなんだから短歌をやりたい人に決まってるだろ!!」と思いそうなところですが、先ほどの例のように「依頼者と参加者」が異なる場合、短歌に興味がない方がターゲットとなります。

私は短歌ワークショップのターゲットのレベルを大きく3つに分類しています。

 ①短歌に興味がない方(※依頼者と参加者が異なることが多い) 
 ②短歌に興味がある(短歌の本を読んだことがあるなど)けど作ったことがない方
 ③すでに短歌をやっててもっとうまくなりたい方

3つのどこに当てはまるかででコンセプトにも影響があります。

私のワークショップは①の短歌に興味がない方がほとんどで、たまに②の短歌に興味がある方向けに開催しています。

①の方は②へ、②の方は③へ、③の方はさらに高みを目指して…というように、階段を1つ上がれるような企画を作ります。

短歌に興味がない方は「興味」を持つのが第一歩

 

まず、自分のワークショップは①②③のどのステップの方に受けてもらうのかを考えてみましょう。

ここを間違えると、めちゃくちゃ短歌が上手い人に短歌の基本を伝えて「そんなん知ってるわ…」と思われたり、短歌がはじめての人にいきなり技巧的な話をして「短歌って難しいわ…」と思われたりして、いわゆるミスマッチが起こるおそれがあります。

もちろん①のつもりで初心者ワークを企画したのに③の短歌経験者が来ることはあります。(そして私自身が短歌7年目なのに未だに①②がターゲットであろうワークショップに参加して主催者に変なプレッシャーを与えてしまう1人です。)

参加理由はスランプ中に初心に戻るため(以前記事に書きました)だったり、興味本位だったり、主催者が好きな歌人だったりといろいろです。でもそれはコンセプトを理解した上で参加しているから問題ないのです。

ターゲットを明確にし、そのターゲットがワークショップ終了後にどうなっていたいか/どうなってほしいかがコンセプトになります。終了後のイメージはスキル的な上達だけではありません。「短歌って楽しいかも…と思ってもらう」とか「終わった後、短歌の本を読んでみよう!と思ってもらう」など、いろんなパターンがあります。

コンセプトが明確なら、その内容は募集文にもしっかり記載しましょう。
「初心者向けと理解した上で興味があるから受ける」「上級者向けとわかっているけど、レベルアップしたいから背伸びして挑戦する」という姿勢になって、想定ターゲットとズレがあったとしても、心理的なミスマッチを防げると思います。

自分で企画する場合は、想定ターゲットを自分で定め、ターゲットが集まりそうな場所で開催、告知します。

依頼を受けた場合は打ち合わせ時に依頼者の想定ターゲットをヒアリングします。特に想定されていない場合は自分で定めて提案することになるでしょう。

私が過去に受けた依頼ををいくつかご紹介します。

  • 依頼者は大学の講師。参加者は日本語諸学舎の留学生。
    日本の文化を学ぶ一環で「短歌」に触れてもらいたい。
  • 依頼者は求職者支援施設のスタッフ。参加者は求職者。
    短歌を作ることで自分の経験を棚卸しして、面接や履歴書作成に役立てて欲しい。
  • 依頼者は書店の店長。参加者はこれから書店に来て欲しい人。
    短歌に関する楽しそうなイベントを開催して書店に集客したい。

このように受ける依頼はさまざまです。目標に合わせて、短歌の数ある魅力の「どこ」をピックアップして組み立てるかが腕の見せどころですね。

打ち合わせのなかで以下の条件もしっかり確認しておきましょう。

  • 日時
  • 参加人数(最小開催人数、最大人数)
     多いときは班分け(机の移動)ができるか
  • 対面?オンライン?
  • 参加者同士の距離(感染対策で机の距離を保つ必要があれば個人ワークをメインに…ということも)
  • 教室の広さ、設備(ホワイトボードやプロジェクターがあるかなど)
  • 協力者(アシスタント)がいるか

また、依頼された場合はそもそも「依頼に至る経緯」があるはずです。なぜ「私(歌人)」に依頼したのか?なぜ「短歌」なのか?「短歌」に期待していることは何なのか?をしっかり聞いておくと良いでしょう。

コンセプトが決まったらいよいよワークの企画です。

 

短歌ワークの企画

ワークショップはアイスブレイクからメインワークへの大きな流れを考えることが重要です。

コンセプトで決めた「ターゲットの目標」に合うメインワークを最後にすることを考えて構成します。

さっきの図の使い回しですみません

 

ワークショップの合計時間にもよりますが、基本的には3〜4ステップで構成することが多いです。

  1. 参加者の緊張を解くアイスブレイク
  2. メインワークの前段階としてのミニワーク
  3. 目標をかなえるメインワーク
    (メインワークのなかにも小さなステップがあることもある)
  4. その日の振り返り

具体的に私が開催した事例を挙げてみます。

 

【依頼内容】
ターゲット:中学生
依頼:授業内の2コマ(クラスによって使える自由な時間)で、必修科目の「短歌」が始まる前に、短歌の楽しさに触れてもらいたい
条件:新型コロナウイルス対策のため、机をくっつけて対面で話すようなワークショップは不可能。講師もオンラインで講義をする。

 

【短歌ワークショップ内容】

  1. アイスブレイク:音の数え方を拍手で数える。
  2. 短歌の基本(5分程度のレクチャー)
  3. ミニワーク:短歌の穴埋め(言葉がひとつ変わるだけでも意味が変わることを理解する
  4. ミニワーク:短歌のカードゲーム 57577(ゴーシチゴーシチシチ)プレイ (楽しく5・7・5・7・7のリズムに慣れる。)
    ※感染対策で対面ワークが禁止されたため、リモート版の遊び方で個人ワーク。
  5. メインワーク 文章から短歌を作る(イチから短歌を作るのではなく、長い文章を削って短歌にする方法を伝える。)
  6. 振り返りは授業後にアンケートで。

細かいワークの内容は省きますが、このように、コンセプトに合わせて複数のワークを組み合わせます。

授業ですが、名作短歌の解説などはしませんでした。それは後日国語の授業でやることです。私はその国語の授業の前に「短歌って楽しそう」と思ってもらうための時間で良いのです。

また、「短歌の基本」は授業ですでにやってくださっていたので、おさらいを話す程度にしました。
「机をくっつけて対面で話すようなワークショップが不可能」になり、ワークは個人でできる形にカスタマイズしました。

毎回複数のワークを組み合わせるため、過去に企画した短歌のワークはある程度データベース化しています。ある程度回数を重ねてきたら、過去の組み合わせて土台を作り、依頼者の要望に合わせてカスタマイズし、過去のワークではターゲットを満足させられないと思ったときはその都度追加でアイデアを考えています。

 

短歌ワークのアイデアを考える前に

短歌のワークのアイデアはどんなところから生まれるのか?も記載しておきます。
短歌のワークを考える前に大切なことは、「短歌」にまつわる要素を棚卸ししておくことだと思います。「自分にとって短歌とは」をいろんな方向から掘り下げまくります。

「短歌」は「詠む(make)」だけではなく、「読む(read)」の側面もあります。また、短歌と短歌を組み合わせて連作(複数の短歌作品をまとめてひとつの作品として発表すること)を「組む」ことも。
そして、短歌は「日本の文化」で、「」のひとつで、もっといえば「創作」のひとつ。遠い昔から「伝える手段」=コミュニケーションのひとつの形で、自分の感情をぶつけられる場所で、思い出や感情を整理する作業で、短歌を読むことは「能動的に読む練習」で…
と、いま私が適当に考えただけでもたくさんの側面があります。

短歌の魅力はひとつじゃない!

短歌に対するたくさんの側面をみつけられれば、コンセプトに合わせた切り口で掘り進めていくことができます。

ターゲットの目標が「自己表現」ならメインワークは「詠む」側面から掘り下げることになりそうです。

「コミュニケーション」が目的の場合、「詠む」ことで「思いを伝える」側面から掘り下げることもあれば、「読んだものを言語化する」ワークを入れることもあります。

私は「歌会風ワーク」と呼んでいます。ふだん歌人同士で行う歌会(お互いの短歌に対してコメントしあう会)は、「短歌に対してどう思いましたか?」を共有する場です。
歌会をすると、ひとつの短歌を複数の視点から見ることになります。そしてそれを言葉で共有し合います。これはワークショップで重要とされている「対話」なんです。(これについても過去にnoteで書きました)

対話:言葉を通じて話し合う中で、自分と相手の考えの差(ズレ)を共有しながら、新たな意味を一緒に創造する行為

(※「対話」の定義もいろいろあるようですが、私が1番納得したものを書いています)

歌会風ワークでは、短歌を知らない人たちに短歌を一首提示して読んでもらい、簡易歌会をしてもらいます。

短歌を知らない人に、いきなり短歌を見せて「どう思いましたか?」と言われても…という感じなので、いくつかこちらから質問を投げて、手を挙げてもらいます。

質問を繰り返すと「同じ短歌を読んでいるのに意外と意見が分かれる!」が目に見えてきます。いろんな方向から1つの短歌を見て、意見を共有しながら、自分にとっての思いを言語化していく…という流れです。

このように、すでに存在している短歌の良い測面から掘り下げてアイデアに落とし込み、ワークを考えていきます。それをどのくらいの時間でやるのか、時間内にたくさん見てもらうには書き写しじゃなくて付箋を用意したほうが良いだろうか、などひとつひとつ考えていきます。

時間があれば、友達に練習に乗ってもらい、かかる時間を確認したり、アドバイスをいただいてブラッシュアップすることもあります。

 

短歌ワークショップの企画は楽しい

今回は私の短歌ワークショップの企画作りに対してお伝えしました。細かいことを言い出せばまだまだあるのですが……とにかく、1回のワークに対して、意外といろんなことを考えているのがわかっていただけたでしょうか。

いろいろ考えることがあるものの、私が短歌ワークショップを続けるのはやっぱり「楽しい」からです。私は「短歌」に対してもちろん多大なる思い出がありますが、ワークショップに対しても強く意義を感じています。そんな私にとって「短歌ワークショップ」は本当に楽しくてやりがいがあります。

短歌ワークショップは参加するのもとても楽しいです。ぜひこの記事を読んだ方は各地で楽しい短歌ワークショップを開いてください。そして開催時は私も参加したいので誘ってください。

 

この記事を書いた人

なべとびすこ(鍋ラボ)

TANKANESS編集長。短歌のワークショップをやったりボードゲームを作ったりしています。短歌カードゲーム「ミソヒトサジ<定食>」「57577(ゴーシチゴーシチシチ)」制作者。

Twitter @nabelab00

note https://note.mu/nabetobisco

通販  鍋ラボ公式通販

自選短歌

ふるさとと呼ぶには騒がしすぎる町 でもふるさとを他に知らない

タイトルとURLをコピーしました