【短歌の自由研究】社会科用語を語呂合わせ短歌で覚えよう

企画

今回は「短歌の自由研究」シリーズの第2回をお送りします。

こんにちは、篠田くらげです。

社会科語呂合わせってあるじゃないですか。「いいくに作ろう鎌倉幕府」で1192年を覚えるとか、「なくよウグイス平安京」で794年を覚えるというやつです。今の例もそうですけど七五調のものがわりとありまして、日本の中高生の言語感覚に七音や五音のリズムをひっそり刻んでいるのではないかと思っています。

私も語呂合わせを中高生のころ使いましたし、七音や五音は短歌のリズムですから、短歌を始める前から七五調のリズムになんとなく親しみがあったんだと思います。

しかし、不満があります。

もっと短歌に寄せたい!!!!

語呂合わせが短歌っぽくないのには理由があります。

 

①1つの語呂合わせでたくさん知識を詰め込もうとするために、自然な日本語になっていない

②57577は覚えるには長すぎるのでなるべく575に入れようとする

③いい短歌を作ることはそもそも目指されていない

そこで今回は私が語呂合わせ短歌を作ることにしました。材料は中学社会科用語です。私、ふだん塾で中学生に社会科を教えているので社会科用語はなじみがあります

 

年号だけに絞ると既存のものとかぶりそうなので、広くシャレ的なものを作ります。

なお要素をつめこまないのは短歌一般に通用するコツでして、色々なことをひとつの歌(一首といいます)の中に入れようとしない方がうまくいくことが多いです。短歌を作る人は参考にしてみてください。

 

今回は5つ作りました。

ちなみに短歌は「一首・二首…(いっしゅ・にしゅ)」と数えます。「一句・二句」ではないのでご注意ください。

 

①リアス海岸の形は?

ギザギザなリアスの心で生きている本当以外は知らないままで/篠田くらげ

リアス海岸ギザギザしている」を覚えるための歌です。そして「リアス」と「リアル(本当の、本物の)」はちょっと似てるなあ、と思いまして、それを盛り込んでシャレ的な感じにした……つもりです。

ちなみに同じギザギザでも「フィヨルド」はまた別です。フィヨルドは北欧などにあって、氷河で削られることで作られたものです。リアス海岸は日本なら東北地方の三陸海岸などで見られます。

 

 

②旧石器時代に使われた石器は?

旧石器時代はだせえ進歩して生きていくぜと叫ぶトオルは/篠田くらげ

これの元ネタは「旧石器時代には打製(だせえ)石器が使われている」です。

縄文時代や弥生時代にも打製石器は使われているらしいですが、参考文献の旧石器時代のところに「打製石器を主要な道具とする」と書いてあったのでいいことにしました。

「トオル」のように、誰も知らない人名を入れることも短歌ではよく行われます。これも一種のテクニックと言っていいでしょう。ただ名前によってイメージが変わってくるので、どの名前にするかで成功したり失敗したりします。色々やってみると面白いです。

 

③平等院鳳凰堂を作った人は誰?

寄り道で会いに行こうかぼくたちはそうと知らずに平等だった/篠田くらげ

平等院鳳凰堂を作ったのが藤原頼通(寄り道)であることをテーマに作った歌です。

これもよく言われることですが、短歌は一瞬を切り取ることと相性がよく、短歌を詠む人間(実作者、歌人)は現在形を好んで使う傾向があると思います。短歌はどの歌も「なぜそれをわざわざ短歌にしたのか?」という問いから逃れられません。したがって「それを今感じた今のわたし」にフォーカスしたものになる傾向があります。が、ここではあえてずらして過去形を使ってみました。

 

④金閣寺を建てたのは誰?

よし三つ手に入れようか金閣をいつか燃やせる人に会うまで/篠田くらげ

これは「金閣を建てたのは足利義満(よし三つ)」から取りました。金閣は1950年に放火されまして、その事件を題材に三島由紀夫が『金閣寺』を書いたことをあわせて盛り込んでみました。ちなみに短歌に慣れた人同士でお互いに批評しあう会に出ると、こういう仕掛けはほぼ必ず読み取られますが、いい歌として評価されるかどうかは別問題です。

 

⑤寛政の改革を行ったのは誰?

完成が定められない幸福を 愛することは信じることだ/篠田くらげ

これはちょっとわかりづらいんですが、寛政(完成)の改革をやったのが松平定信だという話です。「定」と「信」を離して置いてみました。「~とは~のことだ」という定義も短歌では時々行われます

短歌はあくまで作者が詠むものですから、その定義が万人に共有される妥当性があるかどうかということよりも、その定義をした作者の内面に単なる独断を超えた普遍性があるかが重要になってくるのではないかと思います。

 

ということで、語呂合わせと、短歌のテクニックを混ぜつつやってまいりました。今日ご紹介したテクニックを再度まとめるとこんな感じです。もちろんこれにあてはまらない歌も無数にありますし、このテクニックは間違いだと思う人も歌人にはたくさんいると思いますが、ひとつの参考として。

①ひとつの歌にあまり色々詰め込まない

②架空の人名でもリアリティは出せる

③現在形で詠むとうまくいきやすいがあえて過去形にするのもアリ

④「~とは~である」のような定義も使い方によっては面白くなる

短歌って最初は何を詠んでいいかわからないこともよくあるので、好きな用語で語呂合わせを作ると面白いかもしれません。用語を出しあって友達と一緒に作るのもいいですね。テストの点数も上がるかも。いいものができたら教えてくれると嬉しいです。それではまたお目にかかりましょう。

 

参考文献

地理用語研究会編『地理用語集第2版』(山川出版社)

全国歴史教育研究協議会編『日本史用語集改訂版』(山川出版社)

 

この記事を書いた人

篠田くらげ

2007年、偶然聞いたラジオ番組をきっかけに短歌を始める。「未来短歌会」所属。「アポロ短歌堂」「嶌田井書店」メンバー。普段は短歌を詠んだり、書評を書いたり、文学フリマに出たりしています。

Twitter @samayoikurage

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