企画概要
今回は、「歌人の人生で一番の映画を互いに鑑賞し、インスパイア短歌を作る」という企画の第4回目、今回で最終回です。
・それぞれの歌人が「人生で一番の映画」のタイトルとレコメンドコメントを提出
・シャッフルして、それぞれの歌人が当たった映画を鑑賞
→映画の感想と、映画にインスパイアされた短歌を5首の連作にして提出
という流れです。
*「インスパイア」の内容は「映画の感想、登場人物の気持ちになる、モチーフを取り入れるなどは自由」というルールです。
これまでの記事はこちら→
今回は8名の方が参加し、互いのオススメ映画を鑑賞して短歌を作りましたので、順番に紹介していきます!
歌人のオススメ映画7:リトル・ダンサー
オススメする人:貝澤駿一さん→オススメされる人:なべとびすこさん
貝澤駿一
1992年生まれ。「かりん」「gekoの会」所属。気に入った映画をくりかえし観る派。好きな映画監督はスティーブン・ダルドリーとアルフォンソ・キュアロン。好きな俳優はイーサン・ホークとグウィネス・パルトロウ。
Twitter @y_xy11
スティーブン・ダルドリー監督のデビュー作で、世界中で大人気のミュージカル『ビリー・エリオット』の原作として知られています。サッチャー時代のイギリス北部の炭鉱町を舞台に、バレエダンサーになる夢をひたむきに追いかける少年・ビリーがすごく愛らしく、観ていて元気になれる作品です。
なべとびすこ
「やってみたいを、やってみよう」を合言葉に、なんでもやっている歌人です。短歌のワークショップをやったりボードゲームを作ったりしながら、よくカラオケに行っています。
Twitter @nabelab00
Blog なべとびすこのなすべきこと
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大規模なストライキが行われる炭鉱の町の喧騒のなかで、周囲にどれだけ反対されても、自分が好きだと思えるものを続ける主人公の姿に胸を打たれました。また、好きなものを好きだと思う気持ちに、理由はないということも強く感じました。ひとりの少年の熱意が周囲の人間を巻き込んでいく流れがとても良かったです。
なべとびすこさんのインスパイア短歌
『鳴るほうへ』
炭鉱の町、ストライキ、喧騒も風に踊ればぜんぶ忘れる
隠しても溢れてしまう夢の音かかとを鳴らして大地をはじく
何もないはずの手だって体温があるように夢 育っている芽
祖母もまたおんなじ夢を見たのだろうその血液が僕にながれる
音のない雷鳴になる、宙の鳥、ただ一点を見つめて回転る
歌人のオススメ映画8:リリイ・シュシュのすべて
オススメする人:なべとびすこさん→オススメされる人:岡本真帆さん
岡本真帆
思春期という繊細な時期に、家にも学校にも居場所がない主人公たちのどこにもいけない思いと、そこから起きてしまった過ち。どうしようもない閉塞感に衝撃を受けて、観終わったあとは茫然としていた。ラストを観てから2回目を見ると、さらにどうしようもない気持ちになる。 何かが当時の自分に響いて、DVDも原作本も買って、卒業論文にも引用し、作中の架空のアーティストLily Chou-Chou(Salyu)のCDも聴くなど、完全に心酔していた。
なべとびすこ
「やってみたいを、やってみよう」を合言葉に、なんでもやっている歌人です。短歌のワークショップをやったりボードゲームを作ったりしながら、よくカラオケに行っています。
Twitter @nabelab00
Blog なべとびすこのなすべきこと
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どこまでも広がる田園風景と高い空。作中の景色はすべて美しいのに、とても窮屈で息苦しい。
とにかく忍成修吾演じる星野のことばかりを考えてしまう。学校ではいじめの関係にあっても、同じ音楽が好きな個人として匿名でつながっていた雄一と星野。本当は心の奥底では通じ合っていたのだと思うと、破綻した関係でしか繋がれなかったことが切ない。悪に染まっていく星野を救う術はなかったんだろうか。
岡本真帆さんのインスパイア短歌
『新しく生まれ直せば』
天国の砂は落ちきり教室は真っ逆さまにひっくり返る
珈琲にたった一滴泥水が入ればそれは珈琲じゃなく
死にたいとそっと吐き出すため息の軽さで少し進む笹舟
0と1だらけの向こう新しく生まれ直せば友だちだった
終わらない日常に弾くアラベスク油まみれの指は重くて
岡本真帆さん→宇野なずきさん 映画「インセプション」
小泉夜雨さん→あひるだんさーさん 映画「ウォーター・ホース」
あひるだんさーさん→貝澤駿一さん 映画「道」
宇野なずきさん→春名柊夜さん 映画「ゴールデン・スランバー」
鈴木智子さん→小泉夜雨さん 映画「ジョー・ブラックをよろしく」
春名柊夜さん→なべとびすこさん 映画「リズと青い鳥」
貝澤駿一さん→なべとびすこさん 映画「リトル・ダンサー」
なべとびすこさん→岡本真帆さん 映画「リリイ・シュシュのすべて」