こんにちは、丹花ヨムです。わたしは連作勉強会をオンラインで主催しています。
今回は連作勉強会を企画した動機の説明と、直近で開催した回についてレポートします。
連作勉強会のススメ!
連作勉強会を企画した動機
連作勉強会は、初心者同士で集まり、自作の連作を持ち寄って相互評をする会です。当日までに事前に読んでくることを必須としています。
この会は、もともと3つの「お得」をモットーに考えました。それぞれを考えた理由をお話しします。
お得① 連作がたくさん読めてお得!
わたしは連作を読むことが大好きです。歌集で読めるけどももっと読みたい、できれば予算をかけずにたくさん読めたら良いのになあと思いました。その一方で、雑誌の新人賞の選考委員座談会を読むと劣等感を感じました。わたしは先生たちのようには深く読み取ることができないのです。
そこで「読み」の練習の場があったら良いのになあと構想を考えはじめました。
お得② 連作の感想をおしゃべりできてお得!
「歌会」の楽しさは、参加者全員で一首毎の良さと悪さに迫るところだと思います。この楽しさを連作でもできたら良いのにと思いました。噂では「連作歌会」というものがあるらしいのですが、Twitterで検索してもTwiplaで検索しても直近ではヒットしませんでした。
仮に連作歌会がどこかであったとしても、知り合いもいないところへ初心者で参加するのはハードルが高いです。初心者でも怖くない連作歌会が必要だと思いました。
お得③ 自作にアドバイスがもらえてお得!
連作をまとめるからには、そのお歌のまとまりに何らかの意図があるはずです。でも、その意図ってちゃんと読者に届いているのでしょうか?
わたしが連作を初めて作ったのは2021年夏のことです。短歌の雑誌「」さんの8首連作の企画に応募しました。緊張しましたし、どうやって連作をまとめたら良いのか分からなくて毎日悩みました。そこで、当時は親しくもなくやりとりもなかったTwitterのフォロワーさん2人に感想をくださいとお願いしました。ここだけの秘密で本音を言えば、こんな勇気のいることしたくなかったです(このお2人とは、これをきっかけで仲良くなった気がします)。
歌会と同じように実験の場が連作の場合にも必要だと考えました。
こうして3つのお得を考えた結果、連絡勉強会を主催するようになりました。
連作勉強会のお作法
勉強会は、難しいことはしていません。ひたすら下記の3点をぐるぐる回しています。
- 作者が音読
- 順番に感想を言う
- 作者から質問とネタばらし
わたしは「勉強会」と名前のつく会に参加したことはありません。ただ、初めて参加する人でもまごつかないようにしたいという思いがありました。
なので、話すことも決めてしまおうと考えました。そこで、雑誌の新人賞の選考座談会を読み、選考委員が何を話しているか分析しました。
- 好きな歌
- 全体のテーマ
- どんな風に全体を読んだか
- 直した方が良いところ
上記4つが座談会で主に語られていることです。なので、勉強会も事前にこの4つを話せるように準備してもらうことにしています。
最近の勉強会の様子
注意事項
食べている時はミュートにしてね!
連作勉強会は飲食自由です!頭を使うとお腹が空きますからね。おやつを準備するように呼びかけています。
「どうしてそう思ったか」を話そうね!
「(hoge)(hoge)だと思いました!」で終わると参加者にも作者にももったいないと思うのです。言葉がつたなくても良いので「どうしてそう思ったか」を表現する練習の場になって欲しいと思います。それに「どうしてそう思ったか」こそが作者の知りたいことだと考えています。
司会は頑張るけど、質問がぬるい時は突っ込んでね!
参加者が良いことを話しているのに、質問がぬるいせいで迫れないともったいないですよね。なので、作者には途中で口をどんどん挟んでもらいたいです。そうして読者がどう感じたかを聞き出せたら良いなあと思います。
参加者の感想
第3回の参加者のうち4人から作品の掲載許可と感想をいただきましたので記載します。
大島健志さんの場合
(大島さんは第1回からの連続して参加してくださっています。)
短歌の連作を作ったことがなかったので、丹花ヨムさんが主催するこの連作勉強会の第1回のために初めて連作を作りました。
お互いの作品の良い点や直した方がいい点をじっくり話し合う楽しさは通常の歌会とも共通していると思いますが、互いに連作を見せ合う醍醐味は、一首単体では見えてこない、その作者の持つストーリー性や作風の傾向みたいなものが、連作全体のテーマや歌の並べ方から感じ取れる点だと思います。連作はボリュームがあり、読み込むのに時間がかかるので、勉強会の一週間前に参加者の連作一覧の資料を送っていただけるのも有り難い点です。
今回の勉強会も、連作の長さやテーマ、作風もそれぞれバラエティに富んでおり、大変楽しく他の方の連作を拝見しました。
自分の連作についても良い点と直した方がいい点についてコメントをいただき、連作の中の好きな歌も教えてもらいました。正確な文言は覚えていませんが、連作全体の印象としては、「ネガティブだけど、どこか明るい」「正直さを感じる」といったコメントをもらえたのが嬉しかったです。自分の今作の狙いとして、陽性のネガティブさや自分のダメさ・弱さを認めた上での前向きさを表現したいと思っていたので、それが読んでくれた方に伝わったことで、一定の手応えを得ました。
その一方、直した方が良い点として、「単調である」「表現のオリジナリティが足りない」「具体や景色を歌に織り込めていない」といったコメントもいただきました。特に最後の「具体や景色を歌に織り込む」というのは、自分でも苦手だと自覚しているので、今後の具体的な課題が明確になった気持ちです。
参加者に人気のあった歌は二首目と八首目でした。どちらも自分でも気に入っている歌なので、好きだと言ってもらえて嬉しかったです。
自分のような初心者にとっては、こういう連作を勉強できる機会は貴重なので、今後も可能な限り参加して、連作づくりのモチベーションにしてゆきたいです。
波川さんの場合
(波川さんは2回目の参加です。)
連作を発表する場ではあまり練習ができない印象です。フリーペーパーや結社誌、応募型の賞など、どちらかといえば本番が多いように思います。
本番を積み重ねて成長するのも方法かとは思いますが、その本番も必ずしも誰かしらの目に留まり何かしらの感想やコメントをもらえるというわけではありません。
連作勉強会では、1つの連作に対して全員から感想や質問、改善点を伝える時間が設けられます。客観的に自分の連作がどう見られるのかを把握できるのは短歌をつくる際の指標のひとつになりますし、感想をもらえればシンプルにモチベーションに繋がります。
また勉強会という名の通り、連作をつくる、読む、感じたことをまとめる、それを伝える、すべての練習ができる機会です。歌会と少し形式は違いますが、歌会に参加したいけれど参加したことがないという人にもとてもいい場所だと思います。
連作やってみたいけど機会がないなと感じている方、賞などに応募する前に客観的な意見が欲しいなと思われてる方、機会があればご一緒しましょう。
さんかまぐねしうむさんの場合
(さんかまぐねしうむさんは初めての参加です)
連作を作るのは初めてだったのですが、みなさん初心者ということでハードルが低く、参加することができました。
連作を作るのは難しく、わたしは10首しか作成できませんでしたが、30首や20首で作っていらっしゃる人がいてすごいなと思いました。
ひとりで読んでいるときには得られなかった発想や、表現方法のあれこれなどとても勉強になりました。
特に、自分の連作を読んでいただいているときはめちゃくちゃ緊張しましたが、憧れの黒瀬珂瀾先生に作風が似ていると言われて有頂天になってしまいました。
今回の連作は自身の心象世界である『レイニア』の小説をモチーフにしましたが、表現の重複が目立ち、改善点が多くあります。いろいろいじりがいのあるご指摘をいただき、改作への意欲が湧いているところです。
歌会でうまく喋れないのが自分の中のいちばん大きなコンプレックスなのですが、今回の勉強会もそうで、うまく話せませんでした。感じていることをうまく言語化できるようになるまでわたしの歌会チャレンジは終わりません。次回もよろしくお願いします。
照子さんの場合
(照子さんは初めての参加です。)
今回の短歌連作勉強会ではさまざまな気づきがありました。色んな方から「作品から感じたテーマ」を伺えて、自分でもぼんやりとしか把握できていなかった、連作のもつ意味やテーマ性、作品の傾向を知ることができました。特に印象的だったのが、「主体が曖昧」と言う指摘で、はじめは短歌として弱いのかなと思っていたのですが、それは必ずしも悪いことではないと、みなさんと作品の話をする中で思うことができました。
ひとりで短歌をつくる楽しみもありますが、歌会や勉強会を通して色んな短歌に触れたり、いろんな読みを聞いたり、歌会や勉強会でしか得られない楽しみがあると強く思った会でした。勉強会を通して、短歌そのものもより楽しむことができそうだと嬉しい気持ちになりました。
終わりに
連作勉強会の雰囲気は伝わりましたでしょうか?
わたしの会でも良いですし、新しい勉強会が立ち上がっても嬉しいです!
なお、次回は2022年2月27日(日)を予定しています。参加者募集中ですので、こちらからご応募ください。
この記事を書いた人
丹花ヨム
2020年に作歌をはじめる。2021年Twitter短歌クラスタの存在に気づき歌会へ出るようになる。短歌ユニット「八朔」。
自選短歌
霧雨がさやさやと降るさむい朝ウルトラライトダウンがぬくい