2020年を思い返すと、生活のほとんどを自宅で過ごしていたような気がします。3月から高校が休校になり、6月から再開したものの休日は外に出ることはできませんでした。家にいるからと言ってやることは特になくって、ごろごろスマホとテレビを眺めるだけ。こういう生活をしていたのは私だけではないはず。
あ~、どっか行きたいなぁ。旅行したいなぁ。
そう考えながら、過去の旅先で撮った写真をぼけっと見ていた時、私はひらめきました。
松尾芭蕉の「おくの細道」って、確か旅先では句を詠んでいないんだよな。あとから旅路を思い出して詠んだって授業で習ったような気が……
そうだ!私も過去の思い出をもとになにかやってみよう!
アシベ
仙台出身の駆け出しライター。趣味はバンドの追っかけとネットラジオを聴くこと、絵を描くこ
と。百人一首を百首全て覚えているのに古典は毎度赤点ギリギリ。
ブログ わくわくどうぶつランド
Twitter @ashibebe_
自選短歌
福女 そう思ったのも束の間で 実は確率6パーセント
旅した記憶を呼び覚まして歌を詠もう
「おくの細道」で芭蕉が詠んだのは俳句。最初は私もそれに倣って俳句を読もうと思ったのですが、シンプルに文字数が足りずに苦しんでしまいました。
そこで、31文字の短歌なら私でもできるのでは?と考えました。
小学生の時に競技かるたを数年間やっていたので、私にとって短歌は俳句よりもっと身近な存在である、というのが大きなポイントです。きっと、きっとできるはず……!
今回の流れはこんな感じ。
①カメラロールから旅先での写真を選ぶ。
②写真を撮ったときの状況やエピソード、気持ちを思い出す。
③それをもとに短歌を詠む。
この方法で作った短歌を「タイムトラベル短歌」と呼ぶことにしましょう。
素人の私では出来上がった歌の良し悪しはわからないため、今回は友人のそらさんに出来上がった短歌を見てもらって感想をを聞いていきます。
それではさっそくやっていきましょう!
1か所目:東京
行ったのが最近である方が記憶も鮮明に思い出せるだろう。そう思って、最初の舞台には東京をチョイスしました。行ったのは2020年1月末。ちょうど次の週からコロナの流行が始まり、震えあがったのを覚えています。
私が最初に選んだのはこの写真。
それでは、この写真を撮った日にタイムトラベルしてみましょう。
タイムトラベルスタート
東京駅の20番ホーム。
東京出張だった父と合流するために一人で新幹線に乗ること1時間半、初めて一人でやってきた大都会・東京。
私の住む仙台もまあまあの都会ですが、東京には遠く及びません。ホームから見える高くそびえるビルの数々は、東京にやってきたという現実を私に強く感じさせます。
一人旅への喜び、東京へついにやってきたという実感。
そうしてできあがったものがこちら。
降り立って高層ビルを仰ぎ見る ここは東京 私はひとり
ホームに降り立ち、ビルを見上げる私。東京にやってきたという実感と、今までこの景色をひとりで見ることはなかったという気持ちを込めたつもりです。
ちなみに、このあと父と合流するために有楽町へ向かったのですが、私は重度の方向音痴なので山手線への乗り換えにめちゃくちゃ苦労しました。地元の仙台でも迷う私が東京で迷子にならないわけがありません。
さて、続いての写真に行きましょう。父と合流して向かった銀座での一枚です。
よくテレビで見る和光本館を前に、私は興奮を抑えられません。信号を待つ人や流れる車の多さにまた都会を感じて一人で嬉しくなります。
三州屋という居酒屋でご飯を食べた後だったから父はかなり酔っていて、かなりごきげん。あ、和光本店の前でダンディなおじさんがサックスを演奏しているな……。
この光景から詠んだ歌がこちらです。
交差点 サクソフォンを聴きながら 夢見心地の午後十時半
交差点で、サックスの音色を聴きながら信号を待っている。おいしいご飯も食べて、テレビでしか見たことのない建物が目の前にある。もしかしたら、これは夢なんじゃないだろうか?そんな幸せに満ちた心を表現しました。
東京編は次で最後です。翌朝、皇居ランをしたときの一枚です。
冬の朝は冷え込むものの、仙台とは比べ物にならないほどのあたたかさ。全く苦しさがありません。そのおかげで周りの景色を楽しむ十分な余裕もあり、約7kmのとても楽しいランになりました。
ここに写る木々は桜でしょうか。きっと、春にはきれいな花をたくさん咲かせるんだろうな……。そんな思いを込め、詠んだものがこちらです。
「うららかな」そう呼ぶにはまだ早いけど 綻ぶ桜思い微笑む
自分が普段生活する仙台よりはずっとあたたかいけれど、まだ冬の寒さ。葉のついていない木を見て、満開の花を想像して春の訪れを心待ちにする。そんな春が待ち遠しい気持ちを込めました。
タイムトラベル終了
さて、東京編はここまで。さらに時をさかのぼり、次の場所へ向かいましょう!
2か所目:京都
さて、次は古都・京都で歌を詠んでいきたいと思います。訪れたのは2019年8月。本当なら12月に高校の修学旅行で再び訪れるはずなのですが、こういうご時世なのでどうなるか未だわかりません。修学旅行がなくなったら……なんて考えると本当につらいので一旦この話は置いておきましょう。
まず一枚目。
タイムトラベルスタート
京都へ向かう飛行機での写真です。青空、そびえる山、大雲海。美しすぎる景色に、歳に見合わず大はしゃぎしてしまいます。そんな気持ちから、こんな歌を詠みました。
見下ろして 大雲海と山脈を いまひとときの神様気分
雲や山を見下ろしている今の自分って、まるで神様みたいじゃないか!そんな浮かれた気持ちを乗せました。
さて、次の写真に行きましょう。ここではとても清々しい天気ですが、まさかあんなことになるなんて……。
めちゃめちゃな雨。
ここは宇治・平等院。電車を乗り継いでようやくやってきたのに、経験したこともないような大雨に降られて服はびしょ濡れ、靴もぐしゃぐしゃ。鳳凰堂の写真を撮る余裕すらありません。
そんな日もあるさと己奮わせた 見えぬ鳳凰 冷える体温
こんなこともある、これも旅の楽しみだ……と自分の心をなんとかささえようとしている様子と悪天候でしっかり見ることができなかった鳳凰、雨で冷える自分を詠みこんだつもりです。
もし修学旅行が中止にならなければリベンジしたいですね。
さて、次で最後です。皆さんにもご利益があるかもしれません。
大雨に見舞われた翌日、伏見稲荷大社で引いたおみくじです。
運勢は……なんと大大吉!
こんなの見たことない……!と家族内でもどよめきが上がります。それもそのはず、大大吉が含まれているおみくじが存在している神社はごくごく僅かなんだとか。図らずに令和のラッキーガールになってしまいました。やったー!
さて、歌を詠みましょう。
福女 そう思ったのも束の間で 実は確率6パーセント
嬉しさの絶頂で「伏見稲荷 大大吉」で検索すると、なんと大大吉を引く確率は6%もあることが判明しました。そんなの。ソシャゲで最高レアリティ当てる確率より高いじゃないか……!
そんなことも思いましたが、文句を言っていると神様から罰が当たりそうなのですぐその考えは捨てます。これからもこのおみくじは財布に入れて大切に持ち歩こうと思います。
タイムトラベル終了
評価やいかに……?
では、ここまで詠んだ歌を見てもらって、感想をもらおうと思います。
素人目に見ても全ての短歌の情景が浮かぶので良かったです。個人的には「見下ろして 大雲海と山脈を いまひとときの神様気分」が、空を飛行機の窓から眺める風景を別視点で見ていて好きでした。
「全ての句の情景が浮かぶ」……!初めて歌を作ったのにこう感想をもらえるのは本当に嬉しいですね……。今にも天に舞い上がりそうな思いです。
初めて短歌を詠んでみて
さて、いかがでしたでしょうか。
はじめは(ドがつく初心者の私がちゃんとした歌が詠めるんだろうか?)と不安でしたが、写真を見て当時の思い出を振り返っていると次々と言葉が浮かんでくるのでそれらをうまく組み合わせる工程はとても楽しかったです。
本来の目的だった旅気分にも浸れたし、新しいことへの挑戦もできた。
今度は、ストリートビューで行ったことのない場所の景色を見ながらその場に行ったつもりになって短歌を作ってみたいなぁ、と考えています。
記憶と発想力次第でどこまでも楽しめる「タイムトラベル短歌」。皆さんもぜひお試しください!
この記事を書いた人
アシベ
仙台出身の駆け出しライター。趣味はバンドの追っかけとネットラジオを聴くこと、絵を描くこ
と。百人一首を百首全て覚えているのに古典は毎度赤点ギリギリ。
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自選短歌
福女 そう思ったのも束の間で 実は確率6パーセント