こんにちは。杉田抱僕と申します。
短歌を作ったり読んだり、人に勧めたりするのが趣味の者です。今回は短歌ワークショップ「ミソヒトサジ〈定食〉で遊ぼう! ~ゲームで覗く短歌の楽しみ~」のレポートをお届けします。
参加者:杉田(主催)、らいおん、あいぼん、ごはん、常温、つぁんべん、さしみ
ミソヒトサジ〈定食〉で遊ぼう!
ワークショップの目的
今回のワークショップの目的は、ずばり短歌初心者に短歌を楽しいと思ってもらうこと。
短歌を知らない人は短歌って楽しそう! 短歌好きはこうすれば初心者を短歌沼に引きずり込める! そう思える記事になるようワークショップを企画しました。ちなみに杉田を除く参加者の短歌経験は「ゼロ」、「学校で習った記憶もほぼありません…」、「少し作ったことがある」といったところでした。
短歌ってどんなもの?
そんな参加者たちに「そもそも短歌ってどんなものなんだ?」を紹介するところからスタート。レジュメで簡単な説明をした後は、写真の通り歌集などを自由に手に取ってもらいました。
つぁんべん:僕はこれ好きです(『歌―ロングロングショートソングロング』枡野浩一)。普通に共感した。
杉田:確かに枡野さんの歌は共感しやすいかも。あと枡野さんなら『ドラえもん短歌』っていう本も、
つぁんべん:さっきAmazonで見ました。
杉田:早い(笑) なら『ショートソング』っていう小説が、
つぁんべん:それもさっきAmazonで見ました。
一同 (笑)
杉田:その『ショートソング』の登場人物が作った短歌として、この『ピクニック』の作者である宇都宮敦さんの短歌が使われてます。
つぁんべん:短歌と物語って『伊勢物語』みたいですね。現代にも同じスタイルのものがあるって知ってたら、高校のときもっと楽しく勉強できたんじゃないかなぁ。
杉田:短歌と物語っていうと、これもそうかな(杉田抱僕『ぺんぎん暮らし』をさりげなく宣伝)。これとこの辺りの作品は文学フリマっていうイベントで入手しました。文学フリマは文学を対象にした即売会で全国開催してるんだけど、広島では来年2月に第2回が開催予定です。
つぁんべん:行ってみたいな。そういう情報はGoogleじゃ引っかからないし、知ってる人に教えてもらわないと分からない。
杉田:短歌はそういうところ確かに弱いかも…… 文学フリマはTwitterアカウント(@Bunfreeofficial)があるので、興味があればぜひ。
つぁんべん:フォローしよ。
短歌は物も情報も「いま興味がない人」のところに届きやすい形ではないよなあ……ということを考えたりしつつ、短歌紹介タイムは終了。
ミソヒトサジ〈定食〉で遊んでみよう
いよいよメインプログラム、「短歌カードゲーム ミソヒトサジ<定食>」の遊び方の1つである「うたいちもんめ」をプレイしていきます。今回は2回戦行い、1回戦でルール把握、2回戦が本番という流れでした。
「うたいちもんめ」簡易ルール説明
「短歌カードゲーム ミソヒトサジ<定食>」は5音の「ゴローカード」と7音の「ナナコカード」を組み合わせて短歌を作るゲームです。
今回遊ぶ「うたいちもんめ」では手札を場のカード(山札・場札)と交換して短歌を作ります。
「薬味チップ」という助詞や語尾を変化させたり付け足したりできるものも使用し、短歌を整えます。
★今回のローカルルール
・特殊カードとして「Joker」(好きな言葉を入れられる)と「Draw」(山札を5枚引ける)を使用
・Joker(本来さじ点なし)をさじ点1点として計算
ざっくりルールを確認したら、習うより慣れろの第1回戦開始。
1回戦
らいおん:手札は何枚変えてもいいんでしたっけ?
杉田:何枚でもどうぞ。
らいおん:いっぱい変えよう……わけわからんぞー?
常温:Jokerはまるごと好きな言葉を入れていいんですか?
杉田:はい。これはナナコカードのJokerなので7音の位置で使いますが、字余りや字足らずがあってもいいです。
常温:便利だけどセンス問われますね。
つぁんべん:【つめた~い】って5音なんですか?
杉田:長音も1音だから5音ですね。促音(っ)も1音、拗音はたとえば「ちゃ」で1音。
それぞれ2回の交換を終えたら短歌は完成です。完成後は発表→投票→ディスカッション→得点計算という流れ。短歌が発表されると、笑い声や「おお~」という声が。
以下、各歌へのコメントから一部を紹介します。ディスカッションの具体的な様子は2回戦までお待ちください。
1回戦発表
※得点計算の仕方
手札のさじ点の合計+プレイヤー投票点=得点 ※記事中の表記もこの順です
・さじ点は札ごとに1~3点設定されている
・各プレイヤーは、自分以外のプレイヤーが作った短歌一つを選んで投票する
・投票点は1票を2点として計算(ローカルルール)
どう見ても勝利の女神ワレワレハドッジボールを飽きるまで食う/あいぼん
常温:【ワレワレハ】までは意味がつながらなかったんですけど、最後まで読んだら全部つながって凄いなって思いました。何か分からないけど【どう見ても勝利の女神】なものがあって、【ワレワレハドッジボールを飽きるまで食う】。【勝利の女神】はすごい女の子のプレイヤーがいるってことかもしれないし、あの子が応援してるから頑張るみたいなことかもしれない。
つぁんべん:ドッジボール大会のときって、盛り上がっておかしくなってる感じがあるじゃないですか。それが【ドッジボールを飽きるまで食う】や、【勝利の女神】がついてることを【ワレワレ】自身が【勝利の女神】だと勘違いしてる倒錯感で出てるんじゃないかなと。
得点10+4=14
ヘイ彼女、天下分け目の生ビール快進撃は大人の逃げ道/さしみ
あいぼん:【大人】と【生ビール】で全体としてまとまりがあると感じました。あと【ヘイ彼女、】っていう入り方にノリのよさがあるし、【天下分け目の生ビール】ってどんな? って。
杉田:【天下分け目の生ビール】は、ナンパを成功させるぞっていうイメージでした。【ヘイ彼女】ってナンパしてる。
つぁんべん:全然何とも思ってない女の子に声をかけるのも【大人の逃げ道】だったりするかもしれない。
得点12+4=16
I have a ミラクルゴリラ化物も体操服よ新入社員/らいおん
杉田:【化物】と言いつつ、【ミラクルゴリラ】に対する優しさのようなものが【よ】で感じられるところが好きです。【体操服】を着た【ミラクルゴリラ】を【新入社員】に見せてるのかな。あと【ミラクルゴリラ】を所有しているっていうのが意外なつなげ方でツボでした。
得点11+2=13
でしたっけ? 山盛りポテトかき氷かの有名なはじめての味/常温
らいおん:【山盛りポテト】も【かき氷】も身近なものだけど、ふと振り返ってみると「今日は味が違う気がする」っていうのが、たとえば嫌なことがあったから美味しく感じたり逆にまずく感じたりするみたいなことかなと、それが面白いなと思って選びました。
杉田:初めて食べたときの「あ、これってこういう味なんだ」っていう記憶が遡れないほど日常的な食べ物として【山盛りポテト】と【かき氷】が並んでいるのかなって思ってました。
得点5+2=7
キングオブ支離滅裂な未成年と雲に舌打ちまるでげんじつ/つぁんべん
さしみ:【キングオブ支離滅裂な未成年と雲に舌打ち】までは別の歌を推してたんですけど、【まるでげんじつ】って、絶対現実じゃないのに【げんじつ】を出しちゃうひねくれた感じがよかったです。
杉田:でも【まるで】ってことは現実そのものではないのかな?
つぁんべん:いやまあ現実なんすよ。
杉田:作者的には現実だった。
つぁんべん:作者的には心象風景なんすよ。あるいは夢。
得点9+2=11
明け暮れる季節はずれのプレゼントダウンベストのお試しパック/ごはん
さしみ:Jokerで自分の言葉を2個も入れますかって。あとやっぱり【ダウンベストのお試しパック】は人生で触れることがない言葉だから面白いなって。
杉田:【プレゼント】は誰から誰になのかな。
さしみ:私は自分が誰かにあげたイメージでした。
つぁんべん:何に【明け暮れ】てるんですか。
杉田:自分は【プレゼント】をもらったイメージだったから、【お試しパック】に詰まってる【ダウンベスト】の試着にだと思ったな。
得点6+0=6
森のなか命を鳴らしこだまする渡りきったら桜を踏んで/杉田
得点8+0=8
※時間調整のためにディスカッションを省略しました
ディスカッション後は得点計算と順位発表です。
第一回戦の王者は、さじ点・投票点ともにトップだったさしみさん作 ヘイ彼女、天下分け目の生ビール快進撃は大人の逃げ道 でした。
2回戦
続く第2回戦中には、高校の先生になるというらいおんさん・あいぼんさんを中心にこんな会話が。
らいおん:これ学校の授業でちょっとやるだけでも楽しくない?
杉田:通販もあるので、よかったらぜひご購入ください。税込み・送料無料で2,200円です。
らいおん:安いんだか安くないんだか……
あいぼん:いや授業で使うと考えれば。
杉田:歌集一冊買うと思えば同じくらいですかね。
らいおん:そっかあ。ただ大学生でもこうあたふたしてるのに、高校生がやったらもっと時間かかりそう。
あいぼん:1回ルールを覚えてしまえば、テスト返却後の余り時間とか折に触れてやれる。
常温:ただクラスでやろうと思ったら何セット要るんだ、みたいな。
らいおん:確かに! 1セット買えばいいと思ってた。
※うたいちもんめの推奨プレイ人数は4~8人だが、カードを半分に分けて8人×2グループにすれば、1セットで16人程度で遊ぶことが可能
そんな会話を交わしたり、お菓子をつまんだりしているうちに2回戦の短歌が完成です。
2回戦発表&ディスカッション
ばあちゃんへ海老の秘密をはちみつを世界を変えるを終えたあとは/ごはん
杉田:【世界を変える】任務を負った人がいて、その任務を終えたら【ばあちゃん】に【海老の秘密】と【はちみつ】をあげるってことかなと解釈してます。【世界を変える】任務に【海老の秘密】が関わってるんだろうなとか、【海老】に【秘密】があるってことは同じ食材の【はちみつ】も何か特別なものなのかなとか、想像が広がっていくところが面白いです。
あいぼん:【海老の秘密をはちみつを世界を】って【を】がつながっていくところとか、【秘密】、【はちみつ】って音の感じがいいなぁと思いました。あと【世界を変える】って大きいことに対して【はちみつ】のレベルが違うのが面白いなって。
杉田:レベルっていうのは身近さの度合いみたいなものですかね? さしみさんはどうですか。
さしみ:自分も【を】が続くのがいいなって思って、あとは【世界を変えるを終えた後は】って文章としてはめちゃくちゃだけどいいなぁって。
杉田:1回戦でも「出会ったことのない言い回し」って言ってたし、その辺が好みなのかな。
さしみ:そうなんですかね。
得点10+6=16
向日葵は冬を待ってた二年前張り裂けそうな歌にしたから/あいぼん
つぁんべん:【向日葵は冬を待ってた】と【張り裂けそうな歌にしたから】が、好きになってもしょうがないのに好きになるっていう感覚でつながると感じました。あえて【冬を待つ】っていうのは、恋愛するのは面倒くさいけどその面倒くささが欲しいっていう風に読めるなって。
ごはん:全体的に切ない感じにグッときました。【向日葵は冬を待ってた】っていう意外性がまずよくて、それが【二年前】で……ストーリーは思い浮かんでいないけど、言葉のまま読んでいって好きだなと感じます。
杉田:具体的なストーリーを結ばないままつながっていく感覚とか、好きだけどうまく説明できないっていうのはよくわかります。短歌を読んでてよくある。
【向日葵は冬を待ってた】と【張り裂けそうな歌にしたから】の関係についてもうちょっと聞いてもいいですか?
つぁんべん:うーん……心象風景だとしたらつながるんじゃないですか。自分の【待ってた】っていう思いを【張り裂けそうな歌にしたから】が象徴してる。
杉田:この歌に〈私〉がいるとしたら、〈私〉は自分と【向日葵】を重ねて、それぞれ何か難しいものを待ってるっていう気持ちを【張り裂けそうな歌にした】っていう感じ?
つぁんべん:そんな感じかなあと。
杉田:自分の場合、【歌にした】ことで【向日葵】が冬を越せるようになった――現実ではなくて作中の存在としてなら永遠を手に入れられるから、それで冬を越えられるようになったんじゃないかという風に読むこともできるんじゃないかなって思ったから、他の人の意見も聞きたかったのでした。
7+4=11点
激怒した。広い心で○すかなアクション映画の剣があれば/さしみ
常温:【激怒した。広い心で】っていう矛盾した繋がりがいいなって最初に思って、その後もサイコ感みたいなものがあっていいなあって思いました。
杉田:【○す】って明らかに「殺す」って言いきってるようなものなのに○で隠す。
常温:ですよね。
つぁんべん:別に殺さなくても許してもいいんじゃないですか。【アクション映画の剣があれば】は、自分を支えてくれるものがあれば、もっと自分が強かったら、殺さずに許せるんじゃないかっていう風にも解釈できるのでは。
常温:こいつはサイコなんだよ。
杉田:【アクション映画の剣】を自分の支えとする取り方があるのかぁ。個人的には【○すかな】っていう言い方にはやっぱりサイコ感を感じてしまうけれども。
つぁんべん:【○すかな】ってぼやかしたらどっちにも転ぶっていうのは、そういう葛藤込みで解釈できるのでは。
杉田:自分がどっち寄りの人間かを試されてる気がしてきたな。
さしみ:殺すと許すで意見割れるだろうなあ、割れてくれと思って作りました。
杉田:作者の意図通りに。
得点10+2=12
知らんけど、おしゃれじゃないが(おいまさか…)聖徳太子よく見たらハゲ/常温
らいおん:【知らんけど、】で始まるのがすごい詩的で面白いなと思います。あと実際見たら【ハゲ】なのはわかるのに、【知らんけど、】って責任を放棄してる感じが面白いなって思って。【聖徳太子】って偉い人だから見間違いかもしれないし……っていう感じにしたくて【知らんけど、】って入れてるのかなって思いました。
杉田:【知らんけど、】【じゃないが】【おいまさか…】って気を持たせるようにつなげるのが上手いなと思いつつ、【聖徳太子よく見たらハゲ】って鉄板で面白いフレーズを持ってくるのがずるいなって思っちゃったんですよね。でも、らいおんさんの解釈を聞いて、このフレーズと前半の気を持たせる回りくどさがつながってるんだって思えました。
つぁんべん:【聖徳太子】が「あの人【ハゲ】じゃない?」って言われて、自分で【よく見たらハゲ】だったってことなんじゃないかと。【聖徳太子】は偉い人だから、「【おしゃれじゃない】」とか「【ハゲ】てない?」って言われても「そうだよね」って言えなくて【おいまさか…】って逃げるんだけど、【よく見たら】本当に【ハゲ】てるっていう。
さしみ:【知らんけど】と【おしゃれじゃないが】は【聖徳太子】が自分で思ってることで、【おいまさか…】は「【聖徳太子】って【ハゲ】てない?」って思った人が言ったのが耳のいい【聖徳太子】に聞こえちゃう。【聖徳太子よく見たらハゲ】はナレーション。
杉田:たしかに【おいまさか…】がカッコで括られているのと、【聖徳太子】は耳がいいっていう逸話を合わせると、【おいまさか…】が周りの声っていうのは呑み込みやすいですね。
得点10+2=12
バグってるゲームとかする4号とリンボーダンスワンマンライブ/杉田
さしみ:【4号】っていうと強いロボットをイメージするけど、【ゲームとか】して、しかも【バグってる】っていうところから、貧乏というか、ロボットと楽しく暮らしてる人間をイメージしました。
常温:僕はNPCとひたすら戦ってるひとりぼっちの子かなって思いました。【4号】っていうNPCと【リンボーダンス】を【ワンマンライブ】していて、友達とかいないのかなって。
杉田:自分としては【4号】はお笑い芸人の芸名のイメージだったんです。【バグってる】ような安っぽい【ゲーム】で遊ぶ相方のいるお笑い芸人が、【リンボーダンス】の【ワンマンライブ】を開くっていう。そうか、ロボットとかゲームのイメージ……
つぁんべん:あと【4号】ってボールの大きさとかもありますよね。
得点12+0=12
イエーーイ!! 嫌いじゃないぜ味がする星も壊して任務完了/らいおん
つぁんべん:この歌は投票するかちょっと迷った。
あいぼん:私も迷いました。
杉田:どの辺が気になったポイントですか?
つぁんべん:頭に【イエーーイ!!】って持ってきたらおかしくなってる感が出るかなって思って。
杉田:でも【嫌いじゃないぜ】って続くから、むしろ主人公っぽい勢いのあるセリフだなと自分は思いました。
常温:映画のラストみたいな。
杉田:そうです。だから【味がする】をどうつなげるか迷ったかな。
あいぼん:私は【味がする星】って面白いなって思いました。【星も壊】しちゃうあたりとか【イエーーイ!!】のテンション高い感じとか、【バグってる】の歌じゃないけどちょっとサイコパス感というか。
杉田:【バグってる】、【○すかな】、【イエーーイ!!】と、二回戦は頭やばい奴が並んじゃったみたいに……
常温:僕は「【嫌いじゃない】【味がする】【ぜ】」、かつ「【星も壊】す【任務】とか【嫌いじゃないぜ】」って解釈です。
らいおん:私としては【味がする】で切って、もっと日常的なイメージでした。たとえば彼女が初めて彼氏を家に招いて手料理をふるまいました。で、その料理に対する彼氏の「【嫌いじゃない】美味しいよ!」って気持ちが三句目まで。【星も壊して】っていうのは後でお腹を【壊す】っていうのを【星】に見立てています。【イエーーイ!!】で喜ばせておいて結果的にお腹を壊す=彼女の料理の【任務】が【完了】したっていう。
あいぼん:【イエーーイ!!】は焦って取り繕おうとしているのか、でも作ってくれたこと自体は嬉しいのか、なんなの?
らいおん:どっちもかなって。作ってくれたこと自体は嬉しいし【イエーーイ!!】って言うんだけど、あとでお腹を壊すだろうっていうのを食べながら感じていて、相反する気持ちがぶつかって【イエーーイ!!】って言ってるのかな。
得点11+0=11
図書館で後悔してるあのことはお逃げなさいよ前に言ってと/つぁんべん
つぁんべん:自分で作ってて、どこで切って読もうかなって。【後悔してる】のは確かなんですよ。でも【図書館】で【後悔してる】のか、【後悔】するようなことが【図書館】であったのか、そこは読み手に投げようかなと思いました。
杉田:自分はこの並び方だと、【後悔】している場所が【図書館】って取るかな。
つぁんべん:【あのことは】と【図書館】の位置も迷ったんですよ。
さしみ:自分的にはこっちの並びの方が好きです。
つぁんべん:倒置はしたいんですよ。【後悔してる】を強調したいわけです。
杉田:【後悔】、【あのこと】、【お逃げなさいよ】、【前に言って】って畳みかけられることで過去に囚われてる感じが伝わってくるから、【図書館】が間に来ないこの並びがいいのかな。
つぁんべん:【図書館】は個人的に【図書館】なんですよ。実際の経験が基になってるので。
杉田:想像が広がる場所だよね。場所を示すゴローカードは他にもあるけど、たとえば【金閣寺】より【図書館】がこの歌はいいんじゃない。
つぁんべん:【金閣寺】は絶対使わない。【闇に立つ】も持ってたんですけど。
杉田:そっちだと漫画とか映画のワンシーンっぽい。
つぁんべん:【蹴り飛ばす】も一回取って捨てたんですよね。【お逃げなさいよ】を【蹴り飛ばす】ことにするか【前に言って】にするかみたいな。
得点8+0=8
第2回戦の王者は、最多投票点を獲得したごはんさん作 ばあちゃんへ海老の秘密をはちみつを世界を変えるを終えたあとは。トップ以外も同率2位が3人、3位が2人と混戦状態でした。
以上でワークショップのプログラムはすべて終了。最後にそれぞれ感想を教えてもらいました。
感想など振り返り
らいおん:ゲーム感覚でやるからか楽しいなっていうのがまずあって、あと作った意図が意外と伝わらないっていうのが面白さであり難しさだなって感じました。ディスカッションを通して「あっ、そういう解釈もあるんだ」って知ることで視野が広がると思うので、高校で使えたらいいなと思ってます。
あいぼん:カードを使うっていうのが創作へのハードルをぐんと下げるなと思って、言葉のセンスに自信がなくても「だってこうカードがあったもん」っていうのはすごい気楽だなと。それにこういう言葉を短歌に入れていいんだってわかったら、自分の中にある似た言葉もいいんじゃないかっていう風に次につなげることができるかなと思いました。
私は伝わりやすいように、難しくないように作ったので、だからこそ自分で思ってなかったような「こっちも取れるよね」って意見は勉強になりました。すごいいろんな解釈があって面白かったです。
ごはん:カードを引くことで自分では思いつかない言葉が組み合わさっていくのが面白かったです。あと自分は物語性のようなものは意識せずに短歌を作っていたんですけど、読んだみんながそこから物語を作ってくれて、それがよかったです。
常温:だいたい出てきたんですけど、でも本当にカードを使うことですごいとっつきやすくて気軽にできたのと、あと伝えたいことは伝わらないなっていう。それがよさと面白さでしたね。
つぁんべん:引いたカードで歌を作ると言いたいこととちょっと違うなってことがあるんですけど、でも逆にカードっていう制約があるからこそ、すっと歌が出るなって思いました。
自分でもこれで遊びたいなと思ったんですけど、ノッてくれる友達が見当たんない……どうしようかなって思ってます。
さしみ:カードには【海老の秘密を】とか自分じゃ思いつかないようなものがあって、それを自分のセンスで組み合わせられるのがいいなと思いました。それから短歌以外もそうかもしれないけど、自分の作りたい短歌と投票される短歌だとやっぱり違ってくるなって思いました。
杉田:では最後に。
短歌を作る人は歌会っていうのをやるんですね。参加者それぞれが作った短歌を持ち寄って批評しあう会で、短歌の「感想をシェアする」という醍醐味が味わえる場だと思ってます。
でも歌会って短歌が趣味だっていう人を集めないとなかなかできない。でもうたいちもんめなら、短歌に触れたことがない人でも歌会とほぼ同じことがいきなりできちゃって、それがすごいなと思ってるんです。
皆さんの感想を聞くと「シェアする」醍醐味――「伝わらない」とか「思ってもみなかった解釈が聞ける」っていう面白さを受け取ってもらえたみたいで、すごく嬉しく思っています。
以上でワークショップのレポートは終了です。
参加者の皆さんは、進行に拙いところも多々あるなか、楽しんでお付き合いいただき本当にありがとうございました! 次回開催するときはより丁寧な進行を心がけます。
おまけ 今回やってみて気づいたこと
・プレイ時間はプレイヤー7人で1回戦40分程度(交換が1人2回で約10分、ディスカッションはすべての歌に触れた2回戦で25分程度でした)。
・ルールは適宜アレンジした方が無難だと思います。今回もアレンジを加えていますが、特殊カードはルールに慣れるまで抜いたほうがスムーズかもしれません。
・カードより一回り小さい白紙を用意しておいて、Jokerや穴埋め部分のある札に重ねたらよかったです(作者オリジナルワードが何だったか分からなくなると、投票やディスカッションで不便なので)。
「うたいちもんめ」は特殊カードの使用/不使用や交換の回数、得点計算の仕方など、全体的にアレンジを加えて「育てていく」ゲームという印象があります。繰り返し遊びながら、ルールをカスタマイズしていくとますます面白そうです。
YouTubeで「うたいちもんめ」の説明動画も公開されています。
この記事を書いた人
杉田抱僕
短歌と読書と好きなものを布教することが好き。推し歌集は『しんくわ』(しんくわ/書肆侃侃房)です。この歌集を読んで短歌が面白いと全人類に気づいてほしい。
Twitter @hoboku_57577
自選短歌
日焼け痕一つもなくてペンギンに遠い体で秋を迎える 『ぺんぎん暮らし』