現在、短歌結社「かりん」に所属する小田切拓が結社に入会してから体験したこと、その後挑戦してみた新人賞のことなどをシリーズにして話していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
*「短歌結社とは」?
短歌の掲載誌を発したり歌会などの活動を行う集団。主に主宰者と他の選者などの方が中心となって活動する。その人に合う結社選びをすると、自作の成長や豊かな人間関係にもつながる。
前回のはじめて3大新人賞に応募した話はこちらから。
2020年、コロナウイルスが僕たちを襲った。
本格派する前に横浜ロイヤルパークホテルのレストランで祖母の一周忌を行った。ダイヤモンド・プリンセス号を窓越しに見て、ウエイターさんと「大変ですよねぇ」などと他人事のように話していた。
それがあれよあれよとコロナウイルスが広がった。普段通りの生活もままならず、世界中が未曽有の事態に陥った。
それは歌人としての僕たちにも大きな影響を及ぼすものだった。
短歌を詠む(作る)ことは、一見個人的な作業にも見える。家か散歩先に一枚のメモ書きとペン、もしくはスマホが1台あればそれで済むようにも思える。
しかし、この連載でも伝えてきた事実がある。結社では歌会や懇親会で先輩や同期、後輩の皆と顔を突き合わせ、歌評や短歌の話、仕事やプライベートを語り合うことで得るものがあるのだ。
自作の短歌を客観視すること、ほかの人の感性に触れて成長すること。互いを話すことで考えに幅が広がることは今まで当たり前のように確保されてきた結社の良さだった。
その繋がりを消してはいけない。「かりん」は動き出した。2020年にSlackという共有ツールを立ち上げた。
4月には、
①チャット機能を使ったSlack歌会
②Zoomを使ったオンライン歌会
③もともと開催されていたネット歌会
コロナ禍本格化の元年の春、自宅待機で暮らしながらこの3つの歌会で「かりん」は活動していた。
①Slack歌会は、チャット機能があるのでネットの掲示板のスレッドのように書き込んだり、返信やまとめができる(今は開催されていない)
②オンライン歌会は日時を決めてリモートで開催される。Zoomで用意したミーティング先に集まり、リモートで一人一首、歌評をしていく。
③ネット歌会はコロナ禍の前から開催。辻聡之さんが中心に司会をしてくれている。ホームページがあり、参加者の歌にコメントと選歌をする。
スケジュールが詳細に分かれていて、
⑴詠草募集期間
⑵作品一覧発表(作者名は伏せておく)
⑶選歌投票
⑷得票数発表
⑸鑑賞・批評期間
⑹作者発表
となっている。現在は②のオンライン歌会を松村由利子さんが、③のかりんネット歌会を中山洋祐さんと辻聡之さんが運営して開催してくれている。
最初はデジタルに慣れていない方がネット環境を繋ぐのに苦労する(筆者もその一人だった)、チャットやオンラインでは喋るタイミングが難しく声が被さってしまうなどの課題があった。
しかし、そこに徐々に慣れていくと、コロナ禍でも殆ど問題なく歌を評しあうことができた。チャットなら文字で、オンラインなら画面にレジュメを共有したり録音することもできた。
そして、思わぬ功名もあった。今まで東京歌会に来づらかった全国の地方の会員が参加しやすくなったのだ。やはり東京から遠方の方々からは好評で「コロナ禍後も併用して開催して欲しい」との声が多数寄せられた。
実は僕も、東京に向かうのにある程度時間がかかる茨城県に住んでいるので、この声には頷かされる。
そして、外出が緩和された昨今では、対面での東京歌会、オンライン歌会、ネット歌会の三つの歌会が盛況である。筆者のかりん賞受賞作の批評会もオンラインで開催していただいた。
現在、僕は殆どすべての土日が勤務日となっているので、なかなか歌会そのものに参加できていないが、復帰の始めとして、オンラインやネット歌会から始めたいと考えている。実はネット歌会は未経験なので、参加しようと思っている。様々な所からまた交流を深めたい。
この文章を書いた人
小田切拓
92年生まれ。「かりん」所属。18歳の時、手に取った雑誌で短歌投稿コーナーを見つけ、歌を詠み始め楽しさを知る。友人が引くほどのサッカーオタク。第29回現代学生百人一首入選。第42回かりん賞受賞。第66・67・68回角川短歌賞予選通過。
Twitter:@rKGlC6f6HEUiU2r
note:https://note.com/takuan12/
自選短歌
落ち込んで「辛い」とぼやく僕の手を祖父が黙ってギュッと握った
短歌のターニングポイント バックナンバー
短歌のターニングポイント<1>〜はじめて結社の見学に行った日〜
短歌のターニングポイント<2>〜はじめて結社の全国大会に参加した日〜
短歌のターニングポイント<3>〜はじめて結社内の新人賞を受賞した日〜