TANKANESSで連載中の天野慶さんの「しょんぼり百人一首」ですが、なんとこのたび書籍化が決定しました!おめでとうございます!
幻冬社から『しょんぼり百人一首 ~それでも愛おしい歌人たち~』というタイトルで刊行されます。
できたてほやほやの書影も公開されています!
TANKANESSの連載が書籍化されるなんて夢のようですね!
これを記念して、TANKANESSでは天野慶さんにインタビューを行いました。
書籍情報もありますので、ぜひ最後までチェックしてくださいね!
しょんぼり百人一首書籍化記念 天野慶さんインタビュー
天野慶
短歌人会同人。歌集に『つぎの物語がはじまるまで』、『 テノヒラタンカ』(共著)。
『ちはやふる』(末次由紀)の93首目、95首目に短歌を提供。
絵本『ママが10にん!?』(絵・はまのゆか)が「 第10回ようちえん絵本大賞」を受賞、幻冬舎の「はじめての百人一首シリーズ」 は10万部を突破するなど、幅広いフィールドで活動している。
Twitter @utataneko57577
自選短歌
この道は春に花降る道となるパラダイスとは変化するもの
Q. なぜ百人一首の「しょんぼりエピソード」を集めようと思ったんですか?
「しょんぼり」、たしかに変わった切り口ですよね!感情的にはマイナスなものですし。
実は「百人一首」は、 平安時代に詠まれた歌が多く撰ばれているのですが、平安時代を代表するあの< この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることのなしと思へば> という藤原道長の、 これ以上ないほどのドヤ顔で詠まれたであろう歌は撰ばれていませ ん。むしろ、道長に迷惑を掛けられた人たち(三条院や藤原公任など) の歌がたくさんあるんです。
なんだかおもしろいな……と思ったのをきっかけに、 百人一首を見直してみました。
すると、呪われた人や島流しになった人や、 失恋ソングばかりがあって。
百人一首はそもそも知人の別荘を飾るために撰ばれたはず。なのに、 なんでこんなにアンラッキーな歌や人ばかりそろってるのか、興味深いなあ、と思っていました。
それから、2019年の11月に「百人一首って」 というイラストレーターさんたちの百人一首をテーマにした展示のお手伝いをさせていただく機会があ りました。
南伸坊さんたち日本を代表するイラストレーターさんの前で百人一首の解説をしなくてはいけないという、 それはそれはハードルの高いお仕事で……。
なるべく楽しく解説聞いていただけたら、 とちょっとしょんぼりしちゃうような、シニカルでユーモラスなエピソードを中心にお話しました。あ、 これを本にしたら「わかりやすい」とか「かんたん」 とはちょっと違う読み物としての百人一首の本が書けるのでは……と思いつきました。
天野さんの1番好きな「しょんぼりエピソード」を教えてください
ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき/藤原清輔朝臣訳:このまま生きながらえれば、つらい今のことが懐かしく思い出されるであろうか。
つらかった昔が、今では恋しいのだから。
清輔さんにお父さんがすごく意地悪するんですよ! さらに仕事もとことん運がなくて!(あまりにかわいそうな詳細はぜひ本で!)
そりゃあ<世の中がつらいと感じる>だろうよ! という環境で。
<でも、長生きしたら、 このつらい今だって恋しく思える日が来るさ>と歌っているのが、負けずにぐっと前を向いていく感じで、とっても好きです。
自分の人生では、3人の子の育児と介護が同時だったので、当時は本当にしんどかったんです。( 大人用おむつと赤子用おむつをドラックストアで買って、両手に持って帰る途中の公園で、急に自分の状況に愕然として、夕日のなかぼたぼた泣いたりして、 とても不審な感じになっていました……)、
今振り返ると、介護していたときの、義父の優しかったところ( 元気だったころは週3で一緒に図書館に行っていたことや、 夜中や明け方には「こんな時間におむつかえさせてごめんね」 といつも言ってくれたことなど)がとても懐かしくて、まだ義父がいてくれた日々が恋しいなあ、まさに<憂しと見し世ぞ 今は恋しき>だなあ、と染みています。
そしていま、いろんなことが不安だったりするのですが、 この歌のように<憂しと見し世ぞ今は恋しき> にいつかなってくれるはず、 と読んでくれる人たちに伝えたいです。
どんな方に「しょんぼり百人一首」を読んでほしいですか?
これを読んでくれている、あなたです!!!
小学生高学年~、というイメージの本ではありますが、 大人も楽しく読んでいただけると思います!
雑学好きな方にも!!
「だめだけど愛おしい」感じを書くとき、三谷幸喜さんのお芝居の登場人物たちのイメージだ!と目標にしていたので、 三谷幸喜さんの群像劇に出てくるダメな大人が好きな方にも是非! !
Q.これまでさまざまな百人一首に関する書籍を出版されていますが、天野さんにとって百人一首の魅力はどんなところでしょうか?
妹に絵を描いてもらった絵合わせから始められるかるた、 ゲームの攻略本みたいな百人一首の本、 歌人の一人称の百人一首の本……あと美文字の本も。 いろんな角度で百人一首について書いてきましたが、 何度も新しい発見があるところがすごいです。
でも、「百人一首の魅力」というより「歌の魅力」 がまず大きいと思っています。
31音しかない、のこりを埋めるのは読んだ人次第、同じ人でも、 また時間がたつと違う風景が見えてきたり。
あ、百人一首はさらに「なぜこの百首なのか」という「謎」 という魅力もありますね。
百人一首関連の本がいっぱい売れたら現代短歌のバージョンも、 いろんな角度から作りたい!!
「百人一首」って、「短歌」に出逢う入り口でもあるので、 魅力的な入り口を用意して、その先にある現代短歌の世界まで足を踏み入れてくれる人をひとり でも増やしたいなあ。
そして、おもしろい作者がいっぱい出てきたら、 おもしろい歌がたくさん読めるし!
百人一首も短歌も、詠むのも読むのもおもしろい! 魅力は尽きないぜ! と繰り返し思いますね。
天野慶さん、ありがとうございました!
書籍情報
『しょんぼり百人一首 ~それでも愛おしい歌人たち~』天野慶(幻冬舎)
絵 イケウチリリー
定価 1,320円
発売日:2020年11月25日
お近くの書店・オンライン書店にてご予約お願いいたします!
「しょんぼり百人一首」の内容を動画で確認!
書籍を買う前に中身が気になる!という方は、TANKANESSの連載のバックナンバーを読んでみてくださいね!
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