「タピオカ」を短歌に詠みたい!初心者だらけの「短ピオ歌」歌会

企画

2019年の夏にしか詠めない短歌

2019年夏を一言で表すなら、タピオカ。

芋から出来てる謎の食べ物・タピオカは、「タピる」という動詞を生み出した。

活用もできる。タピらないタピりますタピるタピるときタピればタピろうタピぬ、タピれども…。

「『風タピぬ』って雅な感じ」

「せっかくだから短歌を作って歌会をやろう」

ある日のTwitterでの会話。2019年の流行りモノ・タピオカと、日本の伝統文化・短歌が出会った瞬間である。

”短ピオ歌”歌会をやろう

タピオカ歌会」その名も「短ピオ歌」には、5人が集まった。

TANKANESS編集長で歌人のなべとびすこさん、TANKANESSライターで少し前から短歌を詠んでいるCooley Gee(くーりー)さん。

そして短歌初心者で、短歌を詠むのも歌会も初めての、わかりおさん、少年Bさん、そして私テクノ

 

今回の歌会の流れは最初に作者を発表せずに司会のなべとさんが事前に集めた短歌を発表、それぞれが感想・コメントを話し合い、最後に作者発表という順序になっている。

歌会っていうと宮中で十二単や狩衣を着て雅なかんじで行われるイメージがあったが、今回はDiscordというチャットアプリを使用して行う。21世紀仕様の歌会だ。

平安時代から令和の現代へ、何人かで集まって短歌を詠み合うというアクティビティが時代と形を超えて続いているなんて、自分も歴史の教科書の1ページに載ったような気分になる。

オンライン歌会の始まり始まり

なべと今日はよろしくお願いします。司会のなべとです。

全員よろしくお願いします!

なべとではまず一首目からいきますね。

 

インスタを見て憧れが募るとも
この街に未だタピオカは来ぬ

 

わかりおインスタタピオカが両方入っていて現代っぽさがありますね。

テクノ田舎の切なさが伝わりますね。田舎ってメディアで見てるものと現実が繋がらないので。

くーりー実はインスタってアカウントは作ったものの、触ってなくてインスタ使いの人がすでに「流行り」の人にみえちゃいます。

なべと田舎に住んでいる方田舎と東京を両方知っている方は特に共感しやすいかもしれませんね。

わかりお地方でタピオカがない、ということと現代っぽさの対比もいいなと思いました。

くーりー:だから、その人の姿勢としてはもうちょい手をのばせばタピオカくらいすぐ飲めそうなのに、街自体にきてないのかよ!って、アンバランスさになんだかにやけちゃう。

テクノそうですね。メディアと現実の断絶、都会の光が届かない距離感。メディアなら手が届くのに現実はそうじゃない、という距離メディアで情報との距離は近くなったんだけど、現実の距離は埋められないなあっていう。

わかりおどこにいてもメディアは人との距離も流行りのものとの距離も近いですもんね。

少年B:好きだしアンテナは張ってるから飲みたいのに、近所に店がないから飲めない。物理的な断絶。

くーりーこの人はタピオカを飲みたいと思ってるのかな?どっちなんだろう。

なべと:「憧れが募るとも」があるから、飲みたそうですね。

わかりお:わたしもそう思いました。

テクノ:タピオカの食感とか想像していそう。

くーりー:なるほど、まず飲んでみないことにはその先どう思うかまでわからないですよね。
諦めちゃってるのかなあとも思いました。タピオカ的な流行りに乗ること自体に。
羨ましいとか、悔しいみたいな感情まではいってないような。どこか遠いものを淡々と眺める感じを受けました。

テクノ:この人が実際タピオカを飲んだらどう思うんだろう?

少年Bタピオカへのハードルめっちゃ上がってそうだから、飲んだあとがっかりするかもしれない。

なべと:せっかくなんで、短歌的に言葉の細かいところにも触れますね。

インスタを見て憧れが募るとも
この街に未だタピオカ来ぬ

ということで、流行りのインスタタピオカの言葉を入れながら、募るとも」と「来ぬ」というちょっと古風な感じの言い回しをしてるんですよね。それで、最先端の世界と、それについていけない古臭い自分の対比になってるのが良いと思いました。

自分の町と流行の世界の断絶が言葉からも伝わる仕組みになってますね。

全員:なるほど・・・!深い!

なべと:現代っぽくするなら

インスタを見て憧れは募るけど
この街に未だタピオカは来ない

みたいな感じでもいけるんですよね。
その辺をどこまで狙っているのかは作者が発表されてから聞いてみたいですね。

 

一首目から想像が広がる。57577からこんなに色んなことが考えられるなんて、その世界の広さに目が明く思いだ。

三十一文字(みそひともじ)に書ききれないことを三十一文字の中でいかに伝え、いかに感じるか。文字に表された言葉だけが短歌の意味ではないのだ。

 

みんなの短ピオ歌

 

ねむるとき
まぶたの裏に
タピオカ色
後味想う
夏のの夢

くーりー:これはヘヴィタピオカユーザーですね。飲んでないと思いつかなそう。
ねむるとき、、ゆめでも、、めがさめても、、タピオカを愛してるのか、のんじゃうじぶんを反省してるのか。

テクノ:タピオカ飲みながら甘酸っぱいようなデートしてバイバイして一人で寝るときの歌かなって思いました(笑)
この人はさっきの人と違ってタピオカが自分のものですよね。

少年Bタピオカと誰かを重ねてるのかな。

わかりお後味想う」がタピオカと他の思い出をかけているのかな?

くーりー:急に色恋沙汰に見えてきた!すごい!

少年B恋人とタピオカ飲むのかな、高校生くらいの子。いいデートだったんだなって感じがする。

なべと:タピオカで高校生のイメージになってるだけで、言い回しだけ見るともう少し上の世代な気もしますね。

テクノ:確かに、「夏の夜の夢」って艶っぽい。

なべと:「想う」も艶っぽさがあります。

くーりー:忘れたくない味わい(おもいで)だったのかなあ、タピオカが流行ってるのまさに今だし、2019年のあの夏のわたしの記憶、みたいに後々よめそうで、なんかいいなあ。

彼と向き合っていて、ちょっとはずかしくなって下を向いたとき、のんでたタピオカに目がいっちゃったのかなあとか、シーンをいろいろ考えてしまう。

なべと:歌会でよくあるのが、「タピオカ色」のところみたいな字余り部分に言及しがちなのでしてみても良いですか?

個人的に「タピオカ色」は面白いワードだと思うんですよ。

だから、字余りもなんですが、真ん中にあるのがちょっともったいない気もしていて…。結句(五七五七の最後の)に持っていっても良いかも。
字余りの気になる気にならないは個人差がありますし、全部の字余りがダメではないですが、

まぶたに浮かぶタピオカ色が

とかで終わってもいいかもしれませんね。
これで7・7なので下の句にちょうどなんです。

少年B:オチなら「タピオカの色」で7字だなとおもったけど、そのまま持ってきてもいいのかー。

わかりお:「」をつけると日本語の良さが出てきますね。
「タピオカ色」という語彙はないけど「タピオカの色」なら日本語としても正しい(日本語教師としての意見)。

なべと:でもタピオカ色っていうオリジナルワードの面白さはあるので。日本語的にあえて正しくない言葉を使うような短歌も多いです!

くーりータピオカ色って、あれだよなあってみんな想像できますよね。黒とはいいたくない、じぶん視点のふくらみもかんじるというか。

なべと:あとは、言葉の節約方法ですが、「まぶたの裏」があるので、「ねむるとき」がなくても良いかも…。「」もあるので、どれかに絞るのが良いかもしれません。言葉を絞って節約すると、別の内容を入れられるので。

わかりお:なるほど、どんなときかその中のひとつだけでもわかりますね。

限られた文字数に、伝えたいことを入れきる工夫。短歌の中にいるのは、少数精鋭の選びぬかれた言葉たちだ。短歌の一つ一つの言葉が輝いて見えてくる。

字余りの「お腹いっぱい感」

 

四つ辻で
私だけがタピる貢茶
飲みきれない
他人の欲望

*ふりがなは指定されていなかったが、四つ辻→よつつじ貢茶→ごんちゃ

少年B:店名がきた。

なべと:短歌は固有名詞を入れるのは個人的に好きです。貢茶はタピオカが人気のお店ですね。

少年B:十字路にある貢茶。

くーりー飲みきれない「他人の欲望」ってなんだろうと想像中です。

わかりお:なんだかお店のキャッチコピーにもなりそうな短歌。

少年B有名なお店だけど、ひとりだけが飲んでるんだよなあ。

くーりー:めっちゃ並ばないと飲めないような有名店ですか?
せっかく並んだ(かもしれない)のに、実際のみはじめると、なんかもうのみきれないって深すぎませんか。

なべと:でもけっこうそれよくありませんか? めちゃくちゃ並んでるから絶対おいしいと思ったけど、「でけぇ〜!こんなに要らん…」みたいな。

わかりおタピオカって底にたまりますよね。他人の欲望も多すぎるとこたえられなくなる。そんな感じなのかなと思いました。恋愛とか職場での人間関係とかもタピオカにからめられそう。

なべと私だけが」なので、隣に飲んでない人がいるように取れました。飲みきれないなら、その人に渡しても良いのに、できないか、していないはず。

少年B:ひとが多くいるはずの場所なのに自分しか飲んでいなくて、ひとの欲望もタピオカもつら……ってなってるのかなぁと。
行ってはみたものの、そんなにタピオカ好きじゃないんだろうなあ。

くーりー:有名店のすごさとか混み具合が分かると、本人の感情がよみやすくなるのかな。なんとなく、むなしさがあるのか、ドヤっているのか、はかりかねる!

なべと:この短歌はリズムが独特ですね。

四つ辻で  5
私だけがタピる貢茶  6・6
飲みきれない  6
他人の欲望    8

字余りや字足らずがダメじゃないんですが、そのリズムが良い効果なのか…というところですね。

わかりお:「他人の欲望」を「ひとの欲望」にしたら7になりますね。

なべと:それもそうですね。ただ個人的には後半の字余りはあんまり気にならないんですよ。

他人の欲望、って字余りにすることで、お腹いっぱい感がありませんか?飲みきれなくて限界感。下の句6・8はけっこうやるのと、限界感を出すためにわざと8・8とかは私もよくやります。

だからこそ、最初の部分は頑張って5・7・5にしたいかなあ。

字余りで、言葉に載せきれない感情をダイレクトに感じさせることができるというのは目からウロコだった。字余りも、伝えるための手段として使う。歌人の言葉へのこだわり、言葉のニュアンスを捉える繊細な感覚にひたすら感心させられる。

「どうせ」の強さ

 

どうせこのブームは去るよタピってた君の笑顔も忘れるだろう

テクノ:上の句からバッサリですね。君とのひと夏だけの恋なんでしょうか。

少年B:容赦がない。

わかりお:すごい、みんな雰囲気が違いますね。青春小説を読んでいるみたいな気持ちになりました。

くーりー:出会い系アプリでデートをくりかえしてる彼氏・彼女がほしい友人と重ねてみてしまう(笑)

少年B上っ面の愛とか信じてないですね、この子。

わかりおなくなるものに対する虚しさや哀しさも感じる。

テクノ逆に、なにか長く続くものがほしいと思っているのかも。

少年B:すでに終わりを感じてるところもあって好きだなあ。でも、そうでなかったらいいなって気持ちも読める。

くーりー:この子もタピってんのかあ、という、タピッてたという事実だけ覚えていて、どんな人がどんな顔でのんでたかまで覚えちゃいないよっていう、夏の駆け抜け感

テクノ:上の句のインパクトが強いので、あえて強い言葉で否定しちゃうことで、実際去ってしまったときの傷つきを緩和したいのかな?という気もしました。

なべと:セルフハンディキャッピング…!
ブームが冷めるように気持ちも冷めるのは自然の摂理だから大丈夫と自分に言い聞かせてるのかもしれませんね。

わかりおキミの笑顔も忘れるだろうという言葉に、恋人との別れをふっきろうとしているのかなとも思えました。タピオカと共にキミの笑顔も忘れていく、だから大丈夫みたいな・・・ほのかな希望も感じる。

少年B最初の「どうせ」が、あとのすべての単語にかかるのすごい。

なべと:全体的に「どうせ」が作用してるんですね。

少年Bどうせタピってた君の笑顔も忘れるだろう
ひとつふたつみっつ抜いても成立する。「どうせ忘れるだろう」なんですよね、最終的に。言いたいことこれなんかな、って。

くーりー忘れるだろう、が、なんかいいなあ。

わかりお:今日ちょうど日本語学校で「でしょう」を教えてて、きっとそうなるという確信に近い文法なので、「忘れるだろう」に、確信に近い理由があるのだろうなと感じました。

なべと:確信に近い理由がタピオカの衰退なのかもしれない…。

くーりー:流行りモノはいずれ廃れるし、相手の笑顔もつかんだままではいられないし、「こんなに笑ってくれてるけど君はぼくのほうをちゃんとみてる?タピオカ飲んでうれしいだけ?」みたいな、切なさもかんじる。

わかりお:タピオカにかわるものとしてチーズティーが出てきてますもんね最近は。

テクノ:チーズティー…!

 

いきなり出てくるパワーワード「どうせ」が、一首すべてにかかってこの短歌に諸行無常の切なさを与えている。入れられる言葉や文字数が限られる短歌のルールの中では、インパクトのある言葉を選ぶセンスがものを言うのかもしれない。

女子高生と「流行りモノ」

流行りモノのんだつもりのタピ貯金
使うめどなく過ぎゆく夏よ

テクノ:最初の歌に続き、この歌もタピってないですね。

なべとタピオカ色に続き「タピ貯金」のオリジナルワードですね。面白いです。タピオカって「(底やお腹に)たまる」ものだから、お金が「たまる」とかかりそう。

テクノこの夏が過ぎたらタピオカ流行りも終わってタピ貯金も終わるのかな…とか考えてしまいました。

くーりー:しかも使いみちがないっていう。

わかりお:よさそうなタピオカあれば飲みたいなと思ってても、並んでたり、これはと思うタピオカに出会えなかったりして、タピ貯金を使う目処がない。タピオカ飲む層の中高生は使えるお金もすくないし。

なべと:じゃあ秋に使えばいいのに…ってふつうはなるけど、ほんとうは夏に使いたかったんでしょうね。
お金が貯まるってめちゃくちゃ良いことのはずなのに、あんまり本人はよく思ってなさそうです。

少年Bタピオカって誰かと飲む場合が多くないですか? 誰かと飲むつもりで貯金してて……ってパターンかなと。

わかりおタピ貯金が無駄になったまま夏終わってしまうやんけ、という気持ちがびしびし伝わります。

なべと:めちゃくちゃかなしい。ひと夏まるまる無駄にした感がある。お金は溜まったけど夏を浪費した

少年B夏休み前に「彼氏とタピりたいねー」って友達と話してる子をイメージした。

テクノ:その友達は彼氏作ってタピってるんですよね。

少年B:そう!せつない!

なべと:もし女子高生想定ならば、「使うめどなく過ぎゆく夏よ」は、今っぽく「使うことなく過ぎていく夏」くらいで良い気もします。

テクノ:なるほど。誰目線かで言葉も変わりますね。

なべと:ただ、個人的には女子高生じゃないと思ってます。なぜなら、女子高生って「流行りモノ」って言うかな…? と思いまして。

テクノ:確かに!女子高生にとっては、「流行りモノ」じゃなくて自分のものですよね。

わかりお:流行っていたねあれ、って後になってから言うセリフだから、流行っていたものがすたれる感覚が女子高生世代ならまだないかも。

なべと:最後を「使うことなく終わってく夏」みたいにすれば女子高生感がちょっとあがるかも。あと、流行りモノじゃなくて
友達と飲んだつもりのタピ貯金 とかなら当事者感があるんです。

くーりー:変わるなあ、言い回しで。

わかりお:タピオカに対して当事者感があるかないかって要ですね。短歌を詠む立場が変わりそう。

テクノ誰目線で詠むかで言葉が変わるんですね。

 

歌の主人公を想定し、主人公目線の言葉選びをすることで、三十一文字の向こう側にいる人の視界が見える。三十一文字ってただの31文字じゃない…!世界の入り口の31文字なんだ…!

ごん、お前だったのか、タピオカに憧れてたのは。

なべと:では、作者発表いきまーす!

全員:お願いしまーす!

 

インスタを見て憧れが募るとも
この街に未だタピオカは来ぬ/少年B

少年B:きゅんきゅん!作者はわたしでーす!

テクノ:えー意外!

わかりお:予想外…!

くーりー:えー!!意外すぎる。
飲みまくってるイメージしかないよ?どうしたの?(笑)

わかりお:まさか憧れが募ってたなんて。

テクノ:Bさん、インスタしてましたっけ?

少年B:してないです。

なべと:めちゃくちゃ言われてる。

少年B地元にないんですよ、だからあるところに行くと飲んじゃう。好きなんですよ、タピオカ。なのに地元で飲めない…田舎で店がないから。

 

少年Bさんのツイッターでは、ほぼ2〜3日に一回タピっている模様が見られるので、完全に予想外だった。憧れが募った結果の高頻度タピなのかもしれない。

艶っぽいタピオカは誰?

 

ねむるとき
まぶたの裏に
タピオカ色
後味想う
夏の夜(よ)の夢/わかりお

わかりお:わたしですー

くーりー:恋っぽいのそうかなと思った。わかりおさんっぽさあった。

テクノ:センチメンタルな方が作った短歌だなーと思いました。私はこっちをBさんかと思ってた。

わかりお:中二病なんです(笑) 寂しさとか切なさを土台にしてしまう。

 

オリジナルワード「タピオカ色」を生み出したのは、日本語教師でもあるわかりおさん。艶っぽくて大人っぽいタピオカの一面が見られた。

タピオカでお腹いっぱいなのは…私です

四つ辻で
私だけがタピる貢茶
飲みきれない
他人の欲望/テクノアサヤマ

テクノ:わたしです!

少年B:テクノさんっぽいなと思った。

わかりお:四つ辻って言葉が出てくるのに知性を感じました。

なべと:せっかくなので元の意図を聞いてもいいですか?

テクノ:台湾の高雄って都市に行ったとき、交差点に貢茶があったんです。
まあまあ店に人はいるんだけど、並んではなかったので、「これ日本ならめっちゃ並ぶじゃん!ラッキー」と思ってタピったんですけど、他のお客さんはタピオカじゃなくて普通のお茶を買ってる人ばかりで、タピってるのは私だけだったんですよね。

タピオカ飲みながら、私もタピオカじゃなくて普通の冷たいお茶が飲みたかったな…と思って。

で、私ほんとは普通のお茶が飲みたかったのになんでタピってるんだろ?と思って。私がタピってるのは、流行りに乗りたかったからで、私がタピオカを飲みたかったからじゃないんですよね。

だから、私がタピオカを飲んでるのは私の欲望じゃなくて、流行りという他人の欲望。と気づいた、という短歌でした。

なべと:なるほど。それなら

四つ辻で流行る貢茶を台湾で見つけてタピってるのわたしだけ

みたいな感じでもいいかもしれませんね。
たぶん要素が多いので、どれか1つに絞っていくつかの短歌に分けると良いと思います。

・東京でブームでも台湾では流行ってないこと、
・流行りに乗りたかったつもりだったのに飲んでいるのは自分だけだったこと、
・ほんとうは自分も普通のお茶が飲みたかったこと。

の3つの内容をそれぞれ一首ずつで良いくらいですね!

 

ついつい内容を詰め込み過ぎてしまい反省した。三十一文字でどれくらいの世界の奥行きを表現するかの見極めから短歌づくりは始まっている。何をどこまで詠むかと同じくらい、何を詠まないか決めることも大切なのだ。言葉だけでなく、シチュエーションも「これぞ!」というものを見極める必要がある。

頭を殴られるようなパワーワードは…やはり!

どうせこのブームは去るよタピってた君の笑顔も忘れるだろう/なべとびすこ

なべと:これは私です。

少年Bわかりお:くーりーさんかと思ってた…!

くーりー:なべとさん、「僕」イメージあるから、「僕」使ってなかったから違うとおもってたわあああ

なべと短歌で一人称が省かれてたらだいたい「僕」か「私」に読んでもらえるので、入れなくて済むなら入れなくて良いのです。

少年B:圧巻です。わーすげぇな、これめっちゃ深いなっておもった。すごい。

くーりー:なんか曲にして歌いたくなる。

テクノ:5・7・5で張り倒されるようなパワーありますもんね。出てきたときに頭が震えるような衝撃受けました。エモ死にしそう。

なべと:そんなに?!(笑)

 

歌人が選ぶ言葉の力はやはり強い。「歌人ってすげえ・・・」素直にそうつぶやいた四人であった。

タピ貯金が溜まったのは…

 

流行りモノのんだつもりのタピ貯金
使うめどなく過ぎゆく夏よ/くーりー

くーりー:やあ!わたしだ

わかりお:私これ個人的に一番好きでした。

なべと:これは女子高生じゃなくて本人想定ですかね?

くーりー:本人よ(笑)

なべと:ですよね!そんな感じしました。

テクノ:くーりーさん、今度タピオカオフしましょう…!

くーりー:これやってからのタピオカオフおもしろすぎません?(笑)

 

「流行りモノ」という言葉を使うことで、酸いも甘いも噛み分けた大人感が出ている一首だった。タピ貯金を吐き出しての豪華なタピオカを一緒に飲みたくなる。

歌人の目のつけどころ

なべと:一応これで全員終わりなんですが、総評というか、歌人からのどうしても気になった点言っても良いでしょうか。

私以外全員なんですけど、短歌を改行しているんです。

全員:確かに!ほんとだ。

なべと基本的に短歌は改行しないのが大多数です。石川啄木はしてますし、スタイルとして改行する人もいるんですが、特別に意図がなければしないほうが自然です。

くーりー:ここで止めて読んでほしいっていう意図もあって、わたしのはわざとでした。

なべと:止めてほしいときは、ひとつ空白スペースを入れたり句読点や読点を入れる手もあります。

テクノ:句読点も入れていいんですね!

わかりおライターは読みやすくっていうのがあるからつい改行しちゃったのかも。ライティングと全く違いますね。

なべと:Webライターならではだったんですね!納得!

改行しなくても句読点とか空白で大丈夫なので、基本は一行一気にいきます。あと、セリフっぽいものならカギカッコをつけたり「!」とか「?」 とかの記号入れたりするときもあります。

わかりお:改行しないからこそ想像をふくらませることができるんですね。

 

短歌の表記の仕方にも工夫があったとは。記号や句読点も使っていいとは、意外と短歌の表現方法って幅が広くて自由なのかも!?

もっと詠みたくなった!

くーりー:たのしいなー、時間あっちゅうま。

テクノ:人生初の短歌体験でした。もっと詠みたくなりますねー。

少年B:わたしも人生初。

わかりお:楽しかったですー!句会はやったことあるんですが歌会は初めてでした。やっぱ全然違いますね。

テクノ:なべとさんのご指摘、どれもめっちゃ面白かったです。

なべと:あんまり添削的に語順入れ替えたりとかも、先生っぽくて嫌だったんですが、ひとりだけ歌人なのでなんか提示しないとなあと。あくまで提案ですし、私の考えが全てではないですけど…!

そんな皆さんはぜひTANKANESSで勉強してください!(笑)

全員:はい!

 

三十一文字から新しい世界を覗く。三十一文字の窓から見える世界を作る。私ももっと短歌の世界に旅をしてみたくなった。タピオカ片手に。

 

この記事を書いた人

テクノ アサヤマ

自称・哲学者。人の心の中で起こることが気になりすぎて医者になったキツネ。短歌は小学生時代には百人一首を覚えて以来だが、詠むことにも興味アリ。

Twitter @technoasym

ゲスト

Cooley Gee

フィールドワークの途中で迷子になるひと。
さんぽの横歩きをしている。
ビリヤニとカレーをよく食べる。
座右の銘「好奇心が足りまへんなあ」

ブログ:note「502」

Twitter ID @CooleyGee_ff14

自選短歌

初恋のひとの初恋のひとがイエロー、タイトスカート履きだしても「無理」
(「特撮短歌」より)

少年B

食べることと寝ることが大好きなライター。
短歌とは無縁の人生を送ってきたのですが、タピオカがきっかけでTANKANESSの企画に参加することになりました。

Twitter @raira21

なべとびすこ(鍋ラボ)

TANKANESS編集長兼ライター。短歌カードゲーム「ミソヒトサジ<定食>」「57577 ゴーシチゴーシチシチ(幻冬舎」、私家版歌集『クランクアップ』発売中。

Twitter @nabelab00

note https://note.mu/nabetobisco

通販  鍋ラボ公式通販

自選短歌

ふるさとと呼ぶには騒がしすぎる町 でもふるさとを他に知らない

わかりお(若林理央)

ライター。取材記事・コラムを中心に執筆している。日本語に深い興味を持ち日本語教師やナレーターとしても活動中。歌人でエッセイストの穂村弘さんの世界観にのめりこみ、短歌を詠んでみたいと思い始めた。

ブログ wakariowriter.work

note note.mu/wakario

Twitter @momojaponaise

タイトルとURLをコピーしました