歌集が買える本屋さん〜大阪・葉ね文庫編〜

レポート
この連載では、日本全国のいろんな地域にある歌集を取り扱っている本屋さんを紹介します。
第1回は大阪の中崎町にある葉ね文庫さん奈良絵里子さんがレポートします。
*2023年2月現在の情報です。

 

はじめまして、大阪でたまに短歌をつくっている奈良絵里子といいます。本日は、大阪で歌集や詩集をたくさん扱っている本屋さん「葉ね文庫」をレポートします。

 

中崎町の葉ね文庫

葉ね文庫のある大阪市・中崎町は、大阪(梅田)駅から徒歩圏内にありながら、小さな路地と個性的なお店が立ち並ぶ、レトロな印象のエリアです。

お店の最寄駅である大阪メトロ・中崎町駅は、構内の壁が緑青色のタイル張りになっています。地下ということもあって、水の底を歩いてるみたいだなーといつも思います。

地下鉄中崎町駅構内の写真

 

駅からお店までは徒歩約3分(体感だと、ほんとにすぐそこ)。写真の左手に写っているのが、お店の入っているサクラビルです。

葉ね文庫のあるサクラビルの外観

迷ったら近くのお店の人に聞いてみよう。あきらめないで!

 

ちょっとわかりにくいのですが、ビルの中に入って、目の前の小さな階段を昇って下りて、その先の廊下をどんどん進むと左手にお店の扉があります。

サクラビル1階の写真

お店は1階にあります。

 

お店に入って最初に目に入るのが、左手の壁。しましまの青色の中に、カモメのような、レ点のような「跳ね」の模様が浮かんでいます。

葉ね文庫に入ってすぐの写真

この青色が中崎町駅の緑青色の壁とリンクして、そのまま水の中にいるような気分になるんです。

 

探していた歌集や同人誌が見つかるかも

葉ね文庫は歌集のほか、俳句や川柳、現代詩など詩歌の本が豊富に揃っていることが特徴です。入って一番前の棚には、歌集のほかに短歌雑誌や同人誌も並んでいます。

葉ね文庫の中の写真

葉ね文庫に揃っている新鋭短歌シリーズ

新鋭短歌シリーズがここまで揃うのは、大型書店でも見ない光景では。

 

手に入りにくい個人誌や同人誌、結社誌を、実際に手に取って選べるのは本当に嬉しい!

店の奥には古本コーナーがあり、漫画や小説など、詩歌以外の本にも意外と掘り出し物があります。

 

お客さんと本の出会いかた

さて、葉ね文庫のお客さんは、歌人や俳人など、詩歌の世界に詳しい人たちだけではありません。

中崎町の街をぶらぶら探検していて、たまたま覗いてみたという人や、詩歌に興味を持ったばかりという人もたくさん訪れるそう。

店主の池上さんは、お客さんから「おすすめの本を教えてください」「初めて読むならどの本がいい?」と選書をお願いされることもよくあるとか。

いつも、どのようにおすすめしているのか尋ねました。

そうですね……基本的には、いろんなタイプの歌集をばーっと並べて、ちょっとずつ読んでもらいます。

それが好きならこれも合うかも、そっちじゃなければこっちかな、と、本当に少しずつ、少しずつ好みを探っていくことが多いです。

知識欲があるというか、まずひととおり知りたいという人には、アンソロジーを気に入ってもらえることが多いですね

こじんまりとした店内なので、たまたま横にいた別のお客さんが「この歌集がいいですよ〜」なんて話に入ってくることもあるそうです。

そういう偶然が面白いときもありますよね。一期一会というか、“ここで出会ったという体験”も含めた特別な一冊を求めている人もいますから

 

店内では、おもいおもいの過ごし方を

葉ね文庫の店内には紅いカーペットが敷かれていて、店の入り口で靴を脱ぐようになっています。
椅子やソファも置かれているので、くつろぎやすく、長居するお客さんが多い印象です。

葉ね文庫内に設置されているテーブルの写真

お客さんの過ごし方について、池上さんに聞いてみました。

たしかに、熱心に語り合うお客さんたちをよく目にします。初対面のお客さんどうしが、ふと気づくと意気投合しているような光景も珍しくないです。

でも、いつも常連さんばかりというわけでもないんですよ。

話の輪に入らず、じっくり一人で過ごす方や、さっと本を選んでいく方も、もちろんいらっしゃいます。

 

ちょっと立ち寄っただけの人、遠方からはるばるやってきた人、お客さんどうしで交流したい人、しない人……いろんなスタンスのお客さんが、小さなお店の中で安心して過ごせるのは、池上さんのおおらかな立ち振る舞いのおかげのように思います。

これは私だけの感じ方かもしれませんが、なんとなく気配が「遠い」感じがあって、お地蔵さんみたいなものに見守られているような雰囲気があるのです。

ちなみに、お店の営業日は火曜の午後・木曜の夜間・土曜日と変則的。

たまにオープンが(おおらかに)遅れることがあるので、開店直後に向かうときは、お店のツイッターをチェックすることをおすすめします!

 

何度も行きたくなるお店

さて、葉ね文庫で本を買うと、嬉しいのがオリジナルブックカバー。

刷るごとに新しいインクと紙を合わせているそうなので、どんな色のカバーに出会えるかは、その時々のお楽しみ。コツコツ集めるのもいいですね。

葉ね文庫でもらえるブックカバー

壁に描かれているのと同じ「跳ね」模様がかわいい。

 

店内にはほかにも、お客さんが言葉や作品をのこしていく「短冊」の展示があったり……

葉ね文庫の短冊

 

歌人・牛隆佑さんプロデュースの展示スペース「葉ねのかべ」があったり……

葉ね文庫に展示されている葉ねの壁

右手の壁。このときは絵と料理レシピと詩のコラボレーション作品「レ詩ピ」が展示されていました

 

葉ね文庫は、小さな店内に楽しい仕掛けがたくさん詰まっています。

ぜひ実際に足を運んでみてくださいね(靴を脱ぐのをお忘れなく)。

 

書店情報

葉ね文庫

Web:http://hanebunko.com/

Twitter:@tobiyaman

住所:〒530-0015 大阪府大阪市北区中崎西1-6-36 サクラビル1F(最寄駅:地下鉄谷町線「中崎町」駅2番出口)

営業日時:
火:15時~21時30分
木:19時~21時30分
土:11時~21時30分

 

この文章を書いた人

 

奈良絵里子

86年生まれ。「めためたドロップス」同人。過去には「シカク月報」「関西の映画・映像情報サイト キネプレ」にて短歌とミニエッセイを連載。短歌ワークショップ「もしも短歌がつくれたら」運営など。

twitter: @fukiteasobiki

自選短歌

しりとりの声を小さくしていって聞こえるところまで近づこう

タイトルとURLをコピーしました