歌人のなべとびすこです。
私は1月から新しい会社で働き始めたのですが、仕事を始めてから明らかにお菓子を食べすぎています……。
最初は新しい会社だったので遠慮がちに飴玉を1日に2、3個食べる程度だったのですが、今ではファミリーパックのアルフォートやKitKatが数日でなくなるようなスピードに…
もちろん働くうえで脳に糖分を補給することも大事です。
お菓子という楽しみがあることで仕事を頑張れるのも事実……
でも、私は去年5キロ近く太ってしまったので、痩せたいんですよ。
毎日毎日たくさんのお菓子を食べてる場合ではないんです。
ということで、
「通勤中に短歌を詠まないとお菓子食べられない1週間」を実施しました。
通勤中に短歌を詠まないとお菓子食べられない1週間
・その日(または翌日)食べたいお菓子について短歌を一首詠む
・その短歌に入っている単語を使って短歌を詠む
→さらにその短歌に入っている単語を使って短歌を詠む*
・詠んだ短歌の合計数だけお菓子を食べられる
*ネット上でよく遊ばれている「いちごつみ」という遊び方を1人で実施するイメージです。
「いちごつみ」については千原こはぎさんのこちらのブログがわかりやすいです。
私はちゃんとお菓子をセーブできるのでしょうか。それではスタートです。
月曜日に食べられるお菓子を決める
企画初日。
アレルギーで鼻が詰まって喉がずっと痛いので、のど飴は絶対に食べたいですね(先週からすでに机に入れてる)。
商品は「はちみつとゆず100%のキャンデー」。
このはちみつ100%シリーズが美味しいんですわ…。
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待ってこれ…
はちみつと/ゆず100パーセント/のキャンデー
五九五…いや
字余り※やけど不思議とリズムは悪くない気がしますね。
※短歌やってない人に「字余りってして良いんですか?」とよく質問されますが、「字余り」に対する考え方は歌人によって違うと思います。
私は気持ちよければ字余りでもそのままいくし、内容と合っていればわざと字余りさせる派です。
ということで今回はこのまま下の句をつけます。
はちみつとゆず100パーセントのキャンデー 血と骨とあと何らかで僕
ここからさらに短歌を連想していきます。(赤字が前の短歌から引っ張ってきた単語です)
血と骨は僕も君にも入ってる こんなにうまくいかないもんか
こんなにも環状線は混んでいて他人だらけの世界で暮らす
11年前まで他人だったのに友達になって友達のまま
友達は3番ホーム 僕はここで どうせまたTwitterで会う
チョコレート系のお菓子は眠気を解消してくれると信じ込んでいるので、先週から机に入れていたKitKatを食べます。
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KitKat 「きっと」レベルの願掛けが充分かもな グレーのニット
レベル上げ 雑魚からもらう経験値集めて今日はボス戦へ行く
スカウター売ってないから雑魚だって気付かず三十路まで来てしまう
売ってないものは買えない 買えるものすら買いづらい残高を見る
残高をアプリで見れる 好感度も恋愛ゲームみたいに光れ
はちみつとゆず100パーセントのキャンデー…5個
KitKat…5個
会社に着くと「はちみつとゆず100パーセントのキャンデー」が4個しかありませんでした。
そして、のどが痛すぎて午前中にほぼのど飴を食べてしまいました。
もしかして私の意思、弱すぎ…?
KitKatも午前中から食べてましたけど、個数の制限がなければもっと食べてた気がするのでこの企画やっててよかったですね〜!
とりあえず決めた個数までにしっかりおさめて退社。
帰りに明日の分のお菓子を決めるためにセブンイレブンに行きます。
火曜日に食べられるお菓子を決める
セブンイレブンで値引きされていたこれ。
「日本で育った塩すいかのど飴」
76円!
めちゃくちゃ安くなってる。賞味期限が3月なので、もしかしたら夏から置いてたんじゃないか?と思うのでそれをそのまま詠んでつなげていきます。
塩すいかのど飴安くなっていてお前も秋を越えたんだろう
哀しみを越えたって聞く 良かったな、なんにもしてあげられなかったな
街の声聞くのもいいな 通信が制限されて何も鳴らない
1日(ついたち)だ。画像も動画も見れるけどLINEを送る勇気だけ無い
YouTube動画があってよかったな 無料のものに生かされていく
…あとから見て気づいたんですが、「1日〜」の短歌は通信制限から連想で作ったので、前の短歌と内容は関連しているものの、単語としては引っ張れてないですね…
(「ない」と「無い」のところはたまたま)
月曜日に朝から短歌9首詠んで、仕事して、帰りに短歌も詠んでちょっと疲れてたのかもしれません…
のど飴だけでは物足りないので、これも追加で。
「明治マカダミアナッツチョコレート」
マカダミアナッツチョコレート美味い チョコだけじゃ、ナッツだけでは物足りなくて
幸せが物足りなくてもちょうどだよ表面張力ってこわいから
こんなとき表面張力はいらないな泣けるだけ泣きたい日もあって
JR混んでない日もあっていいみんなの自宅が平和であれよ
京阪とJRだけの往復で海を見れない日々が続いた
「JR〜」の短歌は、一応「ない」を取ったのですが苦肉の策ですね…。
その前の歌で「表面張力」という強めの単語を使ったため、他は特徴的な単語を入れないようにしたのが災いして、次に繋げにくかったです。
マカダミアナッツチョコレートを食べるのでKitKatは1個だけにします。
感情がKitKatの層みたい 最後に甘くなればいいよな
お菓子じゃないけど、家に「ボディメンテ」があったので持っていきます。お茶や水以外のものも嗜好品と捉えるので短歌を詠みます。
ボディメンテでメンテ中 返品が効かない僕らは傷を抱えて
★火曜日に食べれるお菓子
日本で育った塩すいかのど飴…5個
明治マカダミアナッツチョコレート…5個
KitKat…1個
ボディメンテ…1本
帰ってから
鶯ボールミニの小袋を1つ食べたので、これも詠む。
(鶯ボールって関西以外はあんまり売ってないって本当なんですか? めちゃくちゃ美味しいので関西で買ってください)
やさしさは鶯ボールミニみたいほとんど空気を甘く包んで
水曜日に食べられるお菓子を決める
火曜日に塩すいかのど飴は3つしか食べなかったので水曜日に2つ繰り越し。のどの調子悪いから追加で2首詠みます。
手袋を忘れて入れたポケットに先週食べたのど飴の紙
先週のリプレイみたいな今週の最後に振りすぎた塩コショウ
マカダミアナッツチョコレートは残り4つなので明日食べきるように短歌を詠みます。
自分へのご褒美として適切なマカダミアナッツチョコレート
適切な距離を誤る 哀しみの全体像がわからなくなる
「ちょっとそこまで」って距離のイメージが合わないことに慣れてしまった
まだちょっと期待してたよバカみたいに だから変に夢に出てくる
「ちょっとそこまで」〜の短歌は、ルール上「距離」を入れたんですが、「距離」を消して改作したいですね。即詠はあくまでネタ出しみたいなものなので、あとからちゃんと改作することが多いです。
こっちのほうが良い気がしますね…。
「ちょっとそこまで」の「ちょっと」のイメージが合わないことに慣れてしまった
KitKatがまだ机の中に残っていますが、短歌たくさん詠んでるだけで、食べてるお菓子の量ぜんぜん減ってなくない?!って思ったので自重します。
塩すいかのど飴…5つ
マカダミアナッツチョコレート…4つ
仕事中、今朝なぜKitKatの短歌を詠まなかったのかとめちゃくちゃ後悔しました…
チョコ系のお菓子がマカダミアナッツチョコレート4つだけで足りるわけがなかったです。この企画無視して食べようかと何回も思ったけど持ち堪えました。えら〜い。
木曜日に食べられるお菓子を決める
いつもは一瞬で全部食べてしまうアルフォートですが、こういう企画なので半分だけ食べることに決めます。
「船のやつ」「アルフォート?」「そう」「美味しいっすね」「美味しいよなあ」
船が出るから行かなくちゃ、船のせいにして出てきた日の波が大袈裟
大袈裟に泣いてしまった泣いている理由を最後は忘れるほどに
忘れるよ 休み時間のひとコマのその数秒のひと言なんて
休み時間 ドッヂボールは野蛮だし寝るのも嫌でただ前を向く
前を向くだけならできる 前向きに考えるのが困難なだけ
前の短歌から持ってくる単語の位置をいつもはできるだけバラけるようにするんですが、このときは頭に持ってきてばかりですね…。頭に持ってくる方が作りやすいんですけど。
花粉症のため、邪払のど飴を買います。意味あるんかな…。
というか「邪払」って果物の名前にしては強すぎるのでは?
邪払のど飴は鼻炎に効くらしい信じてないけどとりあえず買う
殺人のニュース見て外 また鼻炎出てる 世界はこわいんだよな
殺人に慣れたコナンに僕たちの哀しみなんてわからないだろ
コナンなら解決できる謎かもな謎を謎のまま放置している
未解決事件のWikipediaを読むたまたま無事で生きてきただけ
アルフォート…6個
邪払のど飴…5個
って言ってたんですけど、自分でも信じられないことに、ふつうにアルフォート全部食べちゃいました。
そんなことあります?
こんなに自分が意志の弱い人間と思ってなくてヒいてるんですけど?
ということで、補完するためにアルフォートから短歌6首詠みます…。
アルフォート 名前の由来を知らなくて僕の名前にも意味は無かった
名前だけ覚えてたんだよ雪景色イメージできるような苗字の
この町は雪景色には縁がない冷たい酸性雨がよく似合う
できるだけ左右に身体を転がして冷たい布団を温めている
左右から微妙に違う音が鳴る一度は切れた神経で聞く
鈴が鳴るように自然に泣けた日の視界の曖昧さを愛したい
金曜日に食べられるお菓子を決める
邪払のど飴は我慢したので金曜日に持ち越します。
KitKatが2つ残ってるので、明日はそれと邪払のど飴だけにしておきましょう。
KitKatの短歌三首目なのでそろそろキツイな…
溶けかけたKitKatが汚す指 暖房で乾いているオフィス
暖房でぼーっとしてた あんなこと冷静だったら言わなかったよ
邪払のどあめ…5個
KitKat… 2個
ということで最終日は明らかにお菓子が少なめでしたが気合で乗り切りました。
もっと食べたかったな…
まとめ
通勤中に短歌を詠まないとお菓子食べてはいけない1週間 終了です。
結局お菓子の量は減らず、体重にも全く影響を及ぼしませんでした。
ただ、短歌を詠むことに集中する通勤時間はなかなか楽しかったです。
最後にちょっとだけ真面目な話をします。
今回のようにしばりがある状態で短歌を詠むと、自分が日常的に使わない単語を使えたり、普段考えていないようなことがふと出てきたりするので、ネタ出しとしては良いと思っています。
今回は一人でやりましたが、複数人でやる方が、自分がよく使う語彙以外の短歌が詠めるので楽しいと思います。
短期間でたくさん作ったので、この記事に載せた短歌は正直言って粗いものが多いですが、これを後から語尾を変えたり単語を入れ替えたり、全体のリズムを考えたりして調整していきます。
なので、「通勤時間だけでこんなに短歌詠めるんか〜!じゃあ、ここで一句!!」みたいな絡み方をするのはやめてください。よろしくお願いします。
この記事を書いた人
なべとびすこ(鍋ラボ)
TANKANESS編集長兼ライター。短歌カードゲーム「ミソヒトサジ<定食>」「57577 ゴーシチゴーシチシチ(幻冬舎)」、私家版歌集『クランクアップ』発売中。
Twitter @nabelab00
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ふるさとと呼ぶには騒がしすぎる町 でもふるさとを他に知らない