みなさん、こんにちは。TANKANESSライターの貝澤駿一です。恒例となった「大人になったポケモンマスター」シリーズ、第3弾の「ポケモンZ-A」編をお届けします!
ポケモン吟行歌会
・プレイ中に立ち寄った町や出会ったポケモン、イベントのなかから印象に残ったものを短歌にして発表する。一人三首。
・歌会は作者を明かした状態で、それぞれコメントしあう。
これまでのポケモン吟行の様子は以下をお読みください。
・ポケモンで短歌作って歌会してみた!SV編
・ポケモンで短歌作って歌会してみた!ダイパリメイク編
今回のポケモン新作、事前にゲームシステムが大きく変わることが示されていたので、正直どうなんだろう……と思っていたのですが、この企画をやるなら!ということでウキウキで購入しました。ただ、あまりにも下手すぎて最初のチュートリアルでヤンチャムに負けてしまい、この先どうなるんだ……と目の前がまっくらになったこともありました。また、広大なミアレシティの探索と、メガシンカというシステムもとても面白かったのですが、以前のように純粋無垢な気持ちでプレイするというよりも、大人になって色々と考えさせられる場面も多いなと思いました。
というわけで、今回も編集長のなべとびすこさん、後輩歌人の郡司和斗さんと一緒に、ポケモンZ-Aについて好き勝手に短歌を作り、好き勝手に批評しあいました。ちなみにこの原稿を書いている12月後半現在、例によって僕はまだ本編をクリアしていません! ゲームは下手だけど、短歌と批評はそれなりに真剣にやっていますので、少し長いですが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。それでは、スタート!
ポケモン吟行歌会
参加者
なべとびすこ
ブラックホワイトをプレイしていないため最初はポカブを選択。
貝澤駿一
なべととまったく同じ理由でポカブを選択。だが、
郡司和斗
ワニノコを選択。オーダイルのメガシンカデザインに、まだ納得がいっていない。
歌会スタート!
あさによるに私のマスターボールだけ抱えて待っている回収屋/郡司和斗
な:「ロストボール回収屋」の制度は今回が初めてですか?
郡:初めてなんじゃないですか。
貝:SDGsですよね。雑に言うと。男の子も女の子も好きな服を着られたり、ヘドロも水で掃除できたり、色んなところで色んな気遣いがされている作品。環境に配慮されている様子が随所に見られる街だから、「ロストボール回収屋」(※ポケモンに投げて外れたボールを、後で回収してくれるお兄さん。ポケモンセンターの前で待ち構えている)がいる。
な:あと、「マスターボール」って今回出てくるんでしたっけ。
郡:マスターボールは2個くらいゲットできるんですけど、今までだったら博士とかから「これで伝説のポケモンをゲットするんじゃぞー」みたいな感じでもらうんですが、今回はそのイベントはないですね。
な:不思議な制度ですよね。今まではボールを投げたら投げっぱなしだったのに、それを回収する人がいて、しかも持ち主に戻るっていう謎の制度。この書き方だと、本当にマスターボール1個「だけ」を回収して待っている回収屋がいるってことなんだけど、それってどういう状況なのか……。
貝:この歌は、本当にマスターボールだけを抱えて待っている回収屋がいるというよりは、「もし」の世界の歌だと思う。もし、マスターボール1個だけを投げて、それで私がいなくなったら、その人は私のマスターボールだけを抱えたまま、朝に夜に待っているんだろう。ゲームの世界であり得たかもしれない話を現実の私が想像している。
な:冷静に考えるとやや不思議だけど、この短歌の世界観として完成していますね。マスターボールも外して、いなくなってしまって、この人は本当にちゃんと生きてるのか?って考える。不穏な感じも出ていて、いい歌ですね。
郡:ポケモン歌会、すごく久しぶりで、この企画だけでしか出ない脳汁が出ていますね。
貝:歌はふざけてるけど、批評は真面目にやりますからね。
郡:そのギャップなんですよね。「SDGs」とか出てきちゃうから。

メガヤドランのからにこもって話さない子に聞かせたい冒険がある/貝澤駿一
郡:内気なのかはわからないけれど、話さない子に伝えたい外の世界がある。その子に冒険の話を聞いてもらうことで、「から」から出てきてもらいたいという歌。メガヤドランのチョイスをどう読むかですよね。からはでかいドリル状になっていて、コマみたいに回るんだけど、あのからにこもるのは結構難易度が高そうな気がする。
な:いつものヤドランのしっぽのイメージで読まないで、メガヤドランを思い浮かべると、確かに難しそうですね。
郡:メガシンカって一時的なものだから、メガヤドランのからにこもられてもすぐ出てくることになるけど大丈夫か?って思ったり。メガヤドランにしたことで、作り手の意図しない読みも生まれている気がする。
な:「ヤドランのからにこもって話さない〜」にしたほうが定型に収まるのに、あえて「メガヤドラン」にしているから、そこもちゃんと考えたいですね。確かに、メガヤドランの方が全身を隠すことができる。からにこもってもいずれメガシンカは終わって、しっぽ以外が露わになってしまう。それを考えて現実に寄せてみると、たとえば引きこもりとか不登校のような「メガシンカ状態」はずっと続かない。色んな力が働いて外へ出そうとされてしまう。だけど、一時的なメガシンカを使ってでも全身を隠したいって思う子もいるんだろうな。この一瞬だけは全ての体を隠して誰にも触れられずに生きてみたいって思ってしまう。
郡:そう考えると、メガヤドラン自身がどんなつもりでメガシンカしたのか気になってきますね。からを破って中身が出てくる方向性のメガシンカもあったかもしれないのに、からをでかくしてそこにすっぽり入ることを選んだのを思うと……。
な:防御に振っている感じはありますよね。
郡:より閉じこもりたいという深層心理があって、こんなふうになっちゃうのかな。
貝:学校で「今ポケモンやってるんだよ」って言うと、結構話をしてくれる子もいるんですよね。ポケモンはやっぱり世代を超えて冒険していくんだなと思います。メガシンカは一時的だから、不登校や反抗期も一時的だというのはすごくいい読みですね。

この街に来るまえどこで何してた僕なんだろう白シャツしまう/なべとびすこ
貝:発売直後から、「こいつ(主人公)は何者なんだ?」って話題になってましたよね。事情を推察するのも野暮なんだろうけど。結構近いなと思ったのは「どうぶつの森」の主人公。でも、「どうぶつの森」ではゆったりと暮らしていくんだけど、今回は電車を降りたら突然カバンを取られて、いきなりバトルして、あれよあれよという間に任務が始まって……。自分の存在はなんだろうって問い直す前に、もうすでに自分には役割がある。ポケモンと出会う前の白シャツをしまってみたら、たまたま偶然ミアレを救う任務が与えられる。そんな「僕」の目線に立つと、「白シャツ」は「僕」の幼さの象徴で、今までの自分とは何かしらそこで決別しているんですよね。そういう展開はやっぱりどこか主人公感があると思いました。
郡:今までだったら旅立つ町があって、お母さんやお父さんもいるけれど、今回は旅行に来たという設定で、ツーリズムが物語の起点にある。世界中がグローバリズムで気楽に行き来できるようになり、そこが物語の始まりになるのは今の世の中に即している感じがしますね。どこからくる電車なのかも、どこへ行く電車なのかもわからない。街が都市国家すぎるというか、壁に囲まれて外は田園というヤバい街だけど。
貝:広いようで狭いんですよね、あの街が。
な:ディストピア感がありますよね。
貝:他の大陸とも地続きなんだろうけど、なんか果ての果てまで来ちゃったような印象を持つ。
郡:そういうのが読みの前提として脳裏によぎると、「僕」という言葉が広がるというよりは収束していく感じがする。
な:今回はポケモンだけではなく自分も戦う……というか逃げなくちゃいけないから、運動神経を要するんですよね。ローリングしながらわざを避けたり。ポケモンのセンスだけではなくて本人の能力もかなり高そうな上に、「なべとってすごい!」みたいなことを言われながら快進撃が続いていって。
郡:急に主人公がフルスペック(笑)。
な:今までだったらポケモンのことしか考えなくていいのに、人間がフルスペックでしかも誰も自分の過去には言及してくれない。この街に来てからの自分のことしか見てくれていないことに不気味さも感じますね。デフォルトの白シャツも、色々買い換えていくともうあの服に戻ることはない。本人もこの街に来る前のことは忘れてしまっているんでしょうね。

ミアレから出られないのはたそがれのりゅうせいぐんを見ていないから/郡司和斗
な:電車でミアレに来たのに、電車でミアレから出ることはできないんですよね。YouTubeの動画で見たんですけど、電車に乗った後に「あ、寝てた」という感じで街に戻されてしまう。
貝:りゅうせいぐんはドラゴンタイプの技ですよね。ミアレシティの閉じ込められた感じは、たとえば多摩ニュータウンのように、街の中だけで何でも完結するけれど、街の外に出ることは憚れるという方向の都市開発に近いかもしれない。プリズムタワーに上がって、この流れ星を見ていない僕は街から出られないんだというアンニュイな気持ちになる。実際にはパリがモデルのようだけど、ひとつの街に閉じ込められた側の鬱屈とした青春の好対象にあるものとして、「たそがれのりゅうせいぐん」なのかな。
な:ニュータウン感は確かに分かりますね。服屋がショッピングセンターみたいに密集してたり。
貝:ポケモンセンターもファミマくらいの間隔であるし。
な:ファミマのノリでポケモンセンターがあって、服屋の近くにも美容院やカフェがあって、屋台が出ていて、ベンチで寝ていたら夜になって……別に任務とかなかったらいい街なんだけど、いい街だからわざわざ他に行くことも考えないで暮らすことができる。
貝:何か理由をつけないと、ミアレから出られないことを納得できないんでしょうね。主人公か実際の僕かはわからないけれど。壁の中で暮らしている、街が小さすぎるというモチーフは映画の「スタンド・バイ・ミー」もそうで、この街に閉じ込められているという感覚を正当化するためには理不尽でもいいから何か理由が必要で、それが「たそがれのりゅうせいぐんを見ていないから」なのはイメージとして割と腑に落ちる。
な:流星群は待っていても出るものではない。自分の力ではどうにもならないものに理由づけを託して、正当化しながら生きていくんですね。
貝:前回の宝探しも結局島の中だけで完結してしまうので、実は一番スケールが小さいんじゃないかと思いましたが、アルセウスの北海道を挟んで、ついに小さな街ひとつに閉じ込められてしまったというプレーヤー心理もあるかもしれないですね。
な:オープンワールドと言いながら、どんどんクローズになっていく……
貝:実際の行動範囲はどんどん狭くなっていく矛盾がある。
郡:ポケモン批評として鋭いものが出ましたね。一生出られないのに淡い希望を抱いているんですけど、そう考えていないと気が狂いますよね。
な:ミアレという固有名詞が出てますけど、他のディストピアに置き換えても成立しそうです。
貝:初句が「新宿」とかでもいいかもしれないですね。

友情もメガシンカするこの街にでんこうせっかの日々のはじまり/貝澤駿一
な:エムゼット団に入ってみんなの信頼を得ていくというのが今回のキーポイントですが、それを「メガシンカ」に例えている。「でんこうせっかの日々のはじまり」は、プレイしていて本当にやることが多いと感じていて、いろいろなことが同時多発的に起こるから、あらゆるタスクが降り注いでくる。一首目と同じで、朝から夜という概念があるからこそ余計にその「日々感」を思いますね。
郡:本当にでんこうせっかだったなあと思いますね。メガシンカを3つ同時に相手するとか、何なんだよって(笑)。新しいメガシンカのお披露目ということで、作り手の願望もあるような気もします。あと、今作は細々としたサブクエストもたくさんあって、ストーリーが続くとどんどんはてなマークが浮かんでくる。僕は1個もやらなかったんですけど。お前ら自分で解決しろ、旅人に頼るなって思いましたね。この歌は「忙しい日々だぜ、へへっ」みたいな感じで、そこをすごくポジティブに書いているんですけど、ゲームの方は結構急かされる印象がありますね。
な:私は郡司さんと逆で、暴走メガシンカと暴走メガシンカの間にサブクエストをやったり服を買ったりして、メインミッションを放置しながら一旦落ち着こうとしてました。せっかく暴走メガシンカを倒したのにまた出てくるんだ……とゲンナリしてしまって。昔だったらメインを進めないと何も進めなくて、行く筋が完全に固定されていたから、ゲームに対する共通の思い出があったけど、今回はサブクエストをやっていない人にサブクエストの話をしてもわからないし、共通の話題を作るのが難しい。そういう意味でも現代的なゲームだなあと思ったりする。
貝:オープンワールドだ。
な:常にミッションがあって刺激を与えられ続けて、それを受動的にこなしていく。私はまだその感じには慣れていないですね。
貝:エムゼット団の四人は結構バランスが良いですよね。言われたことを黙々とやる主人公、コツコツと仕事をして陰で支えているピュール、行動的なデウロ、ズバズバと指示を出しながら自分は何もやらないタウニー。みんなで色々と頑張りながら、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃって思うのは青春の特権だと思う。例えるなら、学園祭の準備みたいな。まあ、思ったより「でんこうせっかの日々」にみなさんストレスが溜まっているようで……(笑)。でも、急かされる感じも悪くはないと思います。
郡:サブミッションについてはやり込み要素で、色々なポケモンの良さがわかるから普通にいいと思いますね。

身ひとつでビルからビルへ 飛び降りじゃ死ねない街のプリズムタワー/なべとびすこ
郡:僕も似たような歌を詠んだんですけど、この安全装置が働いているおかげで死ぬこともできないというのは、さっきの街から出られないのと同じですね。見えない力によって管理されているというのは、フーコーの「生権力」みたいなもので、さすがフランスという感じ。歌だけ見ると、死の暗い印象からプリズムタワーのキラキラしたイメージにスライドして入っていくのは、耽美的でいいなと思いました。
貝:生きるとか死ぬとか、ゲームの中で考えてしまうとキリがない部分もあるなあとは思いました。前回はコライドンに乗って、海に落ちたら元いた場所に戻されるんだけど、今回は降りたらその場所に優しく着地してくれる。そうじゃなくてもう一回上に戻りたいのに、そうはさせてくれないんですよね。
な:またここからハシゴ上がらないといけないのか……ってなる。
郡:ホロベーターもないんだよ!って。
貝:好きで落ちたわけじゃないのに……。
な:鉄骨を渡らされて、ちょっとずれたら落ちて、ロトムグライドで「助かった!」って。いや助かってないわ!って(笑)。
貝:しかもこのロトムグライドも、タウニーから何の気無しに教えられるので、何か仕組まれたものを感じますよね。こうやって歌われると結句のプリズムタワーが目立っていて、死にたくても死ねないのにそこに墓標があるような気がする。街の不気味さも相まって、結構スリリングな歌ですね。
な:前回は「ジャンプして海へ飛び込んでもちょっと慌てれば陸に上がれてしまう」という歌を作っていたので、また似たような歌を作ってしまったと思っていたんですけど、普通に短歌として比べた時に今回の方が圧倒的に良いですよね。
郡:ロトムグライドは安全装置よりもヤバいと思いましたね。滞空時間が一瞬で危なすぎる。
な:スマホロトムの充電が切れてたら……
貝:何でピジョットとかに乗せてくれないんですかね。
郡:本当にそれ。
な:昔だったら自転車に乗れるようになったり、ポケモンのそらをとぶができるようになったりするから、今回もいずれ何かに乗るんだろうと思ったのに、マジで身ひとつでやるんだ!みたいな。

スマホロトムを持たずともホテルから私なら飛び下りられるけど/郡司和斗
な:これもさっき言っていたロトムグライドの歌で、この場合はスマホロトムを持たないでホテルから飛び降りた場合は、普通に死ぬであろう、ということですよね。でもそれを自分ならできるよというのは、どこまでポーズなのか。こんな街にいつまでもいるくらいなら死んだ方がマシだ、くらいまで思っているのかもしれない。たとえば、ホテルで自販機なんかを使う時にスマホを持っていくかどうか、少し迷うこともある。あの世界で、ホテルの屋上にスマホロトムを持たないで行ってしまって、「あっ!」ということもあり得るのかもしれないと思いながら読みました。
貝:どういう感情なのかわからない部分がありますよね。強がりなのか、本心なのか、はったりなのか、自慢なのか……。でも、そういうことを言わせてしまう世界の方が狂っている可能性もありますね。まあゲームだから狂っているんでしょうけど、実際に希死念慮のようなものを抱えながら生きている人は、ホテルでふとこうした感情が芽生えたりするのかなということを考えると、結構怖い歌だなと思いました。
な:あの世界線で希死念慮が出てきたら、やっぱりこういうことを思うでしょうね。
貝:確実に死にたかったらワイルドゾーンでヘルガーとかに……
な:あれも目の前がまっくらになるだけでポケモンセンターに連れていかれちゃう。
貝:何回もやられましたからね、あれで。
な:飛び降りでは死ねないんだけど、実際に街の中に行ったらもっと危険な物がいっぱいある。ちょっと屋上に登ってみたらオヤブンに追いかけられたりして、そこから守ってくれないんだと思ったりする。ロトムグライドに対する歪な感情がありますよね。
貝:すごく命が軽んじられているのに、なぜか巧妙に守られていて。
な:死ぬのだけは許してくれないですからね。この街から出ずに死ぬことだけは許されない。
郡:ゲームの世界では無理だけど、この私ならできるぞという感じ。ワイルドゾーンでは倒されたことがなかったので、その感覚はなかったですね。
な:最初のマダツボミにすらやられていましたね、私。

〈共生〉はたやすく言えることばではないとホイーガころがる道に/貝澤駿一
な:「共生」というワードは何度も出てきているけれど、過渡期すぎて全然危険なんですよね(笑)。今までだったら草むらに入らなければ野生のポケモンは出てこなくて、明確に分かれていたんだけど、今回は普通に街に溢れていて、屋上で息抜きしようと思っても襲われる。モブの人が「ポケモンが苦手な人には住みにくい街になる」と言っていて、そりゃそうだよなと思う。そういう人たちにとっては本当に恐ろしい都市開発が行われているんですよね。ホイーガが道に転がっているような街で、本当に「共生」なんて簡単に言えるんですかと問いかけている。
郡:何でこの街は共生したいんですかね。市長が変わったとか言ってましたっけ。
な:都市開発しなきゃいけないなーと思っているところで、クエーサー社がそれを請け負ったみたいなくだりがあったとは思うんですけど。クエーサー社がやや強引に推し進めているという理解。
郡:民間が主導なわけがなくて、普通に考えて絶対に政治が主導ですよね。それに一番協力してくれているのがクエーサー社。ワイルドゾーンも草むらが街中にあるだけだし、普通に街中で戦えるポケモンもいる。だんだんワイルドゾーンを無くしていく方向性というのも作中で語られていて、そういうのも面白い。この歌はホイーガがギリギリかわいい感じで、ペンドラーが街角にいたら絶句すると思うけど、ホイーガがころがっているくらいならギリ耐えられる。遠くで見守るくらいだから「共生」という言葉も受け止められる。だけど、こっちの世界のピーター・シンガー(※注 動物の権利を唱えたことで有名な倫理学者)みたいな人がいて、もっとポケモンの権利を訴えたりしているのかもしれないですね。
な:市長は最後まで出てこないんでしたっけ。
郡:おそらく。
な:でもガッツリ癒着しているんでしょうね。
貝:わざを使わせるだけの関係ではなくて、ちゃんと共生するべきだとは思っている。でもポケモンはポケモンらしく生きないといけないから、ワイルドゾーンがある。ポケモン本来の生態のまま共生しましょうという考え方は、裏を返せばポケモンと人間は違うということを証明してしまっていて、多様と包摂とか、区別と差別とか、色々と表裏一体の部分がありますね。

メガガメノデス 僕を殺せば何度でも君が苦しいのをわかってよ/なべとびすこ
郡:メガガメノデスって、神みたいな姿になって驚きますよね。
な:見た目からして怖いし、戦い方もエグい。
郡:歌だけ見ると「君」がメガガメノデスで、暴走メガシンカポケモンは一応苦しんでいるという設定だから、倒してあげると喜ぶはずなんですよね。その暴走パワーが残ったまま倒されてくれないと困ってしまう。「君が苦しいのをわかってよ」というのはそういう感じで、現実世界だと「どういうこと?」って思ってしまうけど、暴走メガシンカポケモンを詠まないと出てこないフレーズになっているのが面白い。
貝:素直に読めば、君も苦しんでいる設定なんだし早く楽になれば、という問いかけ。でも、本来だったらポケモンとポケモンが戦うところに自分が引き摺り込まれてしまって、表向きは共闘みたいになっているけど、自分は戦う術は持っていなくてせいぜい逃げ回るだけ。自分も剣とか装備できたり、デジモンフロンティアみたいに自分がデジモンになっちゃうとかだったらいいんだけど、逃げ回るだけで戦うのはポケモンだから、そこで僕を殺さないでくれと願ってしまうと結局全部自分本位になってしまう。真にともに戦っているとはとても言い難い部分があって、こちら側のメガシンカは絆であり、向こう側のメガシンカは暴走であるという構図だけど、本当に絆のメガシンカで戦っていると言えるのかなという疑問があるんですよね。まあ避けるのが下手くそな自分が悪いんですけど。
な:メガガメノデスは、貝澤さんはまだ戦っていないんでしたっけ。
貝:でも最初のメガアブソルの時点で十回くらいやられているので、気持ちはわかりますね。
な:メガアブソルの時なんか、自分のポケモンですらないですからね。別に私がいなくても戦えるでしょって思う。ポケモンが戦っているのに自分は遠くで逃げ回るという無様な戦い方をしている中、メガガメノデスは遠くにいたのに下から近づいてきてインファイトでボコボコにされる。ポケモンをめっちゃ強くして挑んでも、ポケモンじゃなくて自分がボコボコにされて何回も死ぬ。ワイルドゾーンでも先にポケモンにわざを使わせておいて自分は逃げるという卑怯な立ち回りをしないと生きていけなくなって、どんどん自分本位のプレースタイルになっていくことを自覚していくんですよね。
貝:他のトレーナーは自分のいちばんの相棒だけメガシンカさせてくるけど、こっちは6体とも言えばメガシンカしてくれるやつだけになっていって……。
郡:そんな自己卑下しなくても……(笑)

〜歌会を終えて〜
な:今、昔のポケモンをやったらどう思うかはわからないですけど、大人になってからやると「この設定ヤバ!」みたいのにどんどん気づいていって、余計なことを感じながらプレイしているんですよね。短歌を作ろうとしているからかもしれませんが。
郡:大人のプレーヤーにはそういうことを思ってもらいたいと考えながら作っているんじゃないですかね。結構わざとらしいから。
貝:あからさまにツッコみたくなることが多すぎるんですよね。共生とか、観光とか、最近だとタイムリーで熊の問題とか。
郡:熊、暴走メガシンカポケモンすぎる。
貝:口当たりのいい言葉でそれを誤魔化すんじゃなくて、考えさせてツボにハマってしまう。本当はゲームってそういうことを全て忘れるためにあるはずなのに、ポケモンは考察させることで深めていくんですよね。
*
……この企画も3回目となり、ますますゲームシステムを素直に受け止められない歌人と化している僕たちです。個人的には今回の「共生」というテーマについては、職業柄?考えさせられる部分も多く、ポケモンというコンテンツの幅の広さも感じさせられました。
ということで、今回も最後まで読んでくれてありがとうございました!また次のポケモン新作をお待ちください!(それまでに僕はSwitch2を入手できるのか……?)
この記事を書いた人

貝澤駿一
1992年生まれ。現在、「かりん」編集委員。他の所属にジングル、水面。第一歌集『ダニー・ボーイ』(本阿弥書店、2025)。
X(Twitter) @y_xy11
note:https://note.com/yushun0905
自選短歌
まっさらなノート ピリオド そこにいるすべての走り出さないメロス
参加した人

なべとびすこ(鍋ラボ)
TANKANESS編集長兼ライター。第一歌集『デデバグ』(左右社)。短歌カードゲーム「ミソヒトサジ<定食>」「57577 ゴーシチゴーシチシチ(幻冬舎)」シリーズ。
X(Twitter) @nabelab00
note https://note.mu/nabetobisco
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自選短歌
ふるさとと呼ぶには騒がしすぎる町 でもふるさとを他に知らない

郡司和斗
1998年6月生。第62回短歌研究新人賞、第4回口語詩句賞新人賞など受賞。歌集に『遠い感』。川柳句集に『ヒント』。
X(Twitter):@gun_ji_wowowo2
ブログ:遠い感日記
自選短歌
片思いのままいくつかの片思い 冬の桜の木をかいでいる
TANKANESSのゲーム吟行企画
